生命保険料控除の税制メリットとその活用

5つの制度の活用事例や新制度の特集コラムを掲載しております。
毎月(株)ポラーノ・コンサルティング代表のファイナンシャルプランナーであり、FP相談室講師でもある深澤泉さんに保険コラムを執筆していただきます。
著者の深澤さんはFP相談室設立当初よりFP相談を担当されており、 独立後も外部コンサルタントとして各TECの相談を担当。会社の各種制度を熟知して、ソニー社員ならではの悩みを解決していらっしゃいます。
ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が福利厚生保険制度について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。
年末調整でおなじみの生命保険料控除。遺族の保障、医療・介護・就業不能に関する保障、老後資金に充当する個人年金保険など、自助努力で生命保険に加入した場合、1年間に支払った保険料の一定額を所得から差し引くことができ、その結果所得税・住民税が軽減される制度です。
一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除の3種類があります。
制度内容はこちらの動画でご確認ください。
生命保険に加入すると、どの程度所得税・住民税が軽減されるのでしょうか。
年収400・700・1,000万円の人が3種類の生命保険料控除をフルに活用したと仮定して、加入しなかったケースの所得税・住民税の合計額との比較をしてみました。
いずれのケースも、扶養されている人数や扶養されている人の年齢、会社の確定拠出年金のマッチング拠出やiDeCoの実施状況などで税率が変わり、その結果税額が変わります。
年収 | 400万円 | 700万円 | 1,100万円 | |||
未加入 | フル加入 | 未加入 | フル加入 | 未加入 | フル加入 | |
所得税 | 8.8万円 | 8.2万円 | 33.45万円 | 31.05万円 | 100.62万円 | 97.86万円 |
住民税 | 18.1万円 | 17.4万円 | 38.6万円 | 37.9万円 | 52.8万円 | 52.1万円 |
合計 | 26.9万円 | 25.6万円 | 72.05万円 | 68.95万円 | 153.42万円 | 149.96万円 |
税軽減効果 | ▲1.3万円 | ▲3.1万円 | ▲3.46万円 |
※復興特別所得税は考慮していません。
年収700万円の人が生命保険料控除で毎年3万円の所得税・住民税が軽減され、その分で投資信託を30年間積み立て(投信元本90万円)、毎年コンスタントに3%の運用収益が継続したとします。その場合の元利合計額は、約143万円になります(税金や手数料は考慮しないものとします)。
毎年のちょっとした差額の積み立てが、資産形成につながっていきます。
ただし、生命保険料控除は、所得税は年末調整で還付され、住民税は翌年の給与控除の金額で調整されます。そのため、還付額が目に見えません。控除分を有効に活用するためには、控除額をしっかりと把握し、意識して積み立てを行うなどの行動が重要であると思います。
私が相談業務で感じるのは、ソニーグループの総合個人年金では、マイプランに加入している人が非常に多く、ガッチリプランに加入している人が少ない印象です。グループ保険やマイプランで一般の生命保険料控除は使い切っているけれども、個人年金保険料控除は使い切っていない、という人が多いのではないでしょうか。
死亡保障で年間の実質保険料(年間の支払保険料から配当金を差し引いた分)が8万円を超えている人(一般の生命保険料控除の枠を使い切っている人)や、マイプランを活用している人でさらに積み立てる余力がある人は、ガッチリプランで個人年金保険料控除を有効に活用した資産形成を行ってはいかがでしょうか。
(1)総合個人年金の控除額は所得税で最高5万円
総合個人年金の控除枠は一般・個人年金保険料控除ともに旧制度が適用され、それぞれ所得税で最高5万円(新制度の場合4万円)、住民税で最高3万5,000円(新制度の場合2万8,000円)の控除額となり、一般・個人年金保険料それぞれの単独の控除枠としては、2012年以降の新制度より大きくなります。
ただし、一般・介護医療保険料・個人年金保険料の3枠の控除額の合計は、所得税で最高12万円、住民税で最高7万円である点は変わりません。
(2)介護医療保険料控除は幅広い
2012年以後に新規契約した医療(傷害関連のみを保障するものを除きます)・がん・介護・所得補償・就業不能に関する保険料については、介護医療保険料控除が適用されます。
ソニーグループの皆さんに提供されている「介護両立支援プラン」も、介護関連を保障するものとして、介護医療保険料控除が適用されます。保険料は掛け捨てになりますが、自助努力で親の介護に備えれば、税金が戻ってくるのです。
また、「セーフティプラン」の保険部分についても介護医療保険料控除が適用されます。
(3)生命保険料控除が適用にならないものに注意
いくつか注意点を挙げておきます。少額短期保険、2012年以後に契約した傷害保険(特約)は、生命保険料控除が適用されませんので、注意してください。
また、ソニーグループで提供されている保険商品のうち、ソニーグループ共済会で保障される部分にかかる保険料についても適用されません。詳しくは、こちらでご確認ください。
(4)個人で加入している場合の注意点
個人で生命保険に加入している人で、2011年以前の契約(旧契約)について、2012年以降に特約を更新した場合は、契約全体が2012年以後に契約したもの(新契約)とみなされます。前述のように傷害特約等は生命保険料控除の対象外となったり、疾病入院特約が一般の生命保険料控除の対象から介護医療保険料控除に区分変更されるなど、各区分の控除額、全体の控除額が変更となる場合がありますので、注意してください。
また、変額個人年金保険は、一般の生命保険料が適用され、個人年金保険料控除が適用されませんのでご注意ください。
(5)年末調整できなかった場合
個人で加入している契約の生命保険料控除について勤務先での年末調整の手続きが漏れてしまったケースや、年末調整の手続きを行った後に年内に生命保険等に加入したケースなどのように、年末調整ができなかった場合は、翌年に行われる確定申告で所得税を取り戻しましょう。なお、住民税は翌年度分で給与控除される税額で調整されることになります。
生命保険料控除の制度は複雑ですが、控除枠を把握して上手に活用しましょう。
この制度と資産形成を結び付けると、一味違う資産形成を行うことができます。ぜひ実践してみてください。