コラム

5つの制度の活用事例や新制度の特集コラムを掲載しております。

FP相談室講師による特別寄稿
2023.05.25

働く人を支えるための介護情報  ~働きながらの介護の実際と進め方(2)~

働く人を支えるための介護情報  ~働きながらの介護の実際と進め方(2)~

毎月、FP相談室講師にコラムを執筆していただきます。今回は介護支援専門員 川上由里子さんがご担当です。

ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が介護・福利厚生保険制度の有効活用について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


働きながらの介護の実際と進め方(1)につづき、この記事ではSTEP5以降の介護と仕事の両立方法の具体的な手順について説明をいたします。

STEP5.「介護プロジェクトチーム」を作る

介護のキーパーソンを決めます。誰がどのような役割で介護にかかわるのか介護プロジェクトチームを結成し、介護体制を整えます。
チームメンバーは公的サービス(フォーマル)や家族や友人等(インフォーマル)で構成され、ケアマネジャーは介護チームのコーディネーターとなるため最も太いラインになります。専門家の役割と家族の役割が見えてくると、自分の担当が明確になり安心して介護に臨めます。
介護プロジェクトチーム例を図表に示しますので参考にしてください。
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ここで、ひとつ時代の変化を感じるデーターをご紹介します。
介護を頼みたい相手、以前は「配偶者」や「子供」「子の配偶者」など、家族に介護を頼みたいという傾向がありましたが、グラフでは「ヘルパーなど介護サービスの人」が男女ともにトップ、次いで男性は「配偶者」、女性は「子」。「子の配偶者」はわずかです。介護が社会化され、嫁介護、娘介護の時代ではなくなったことがわかります。
もしも自分に介護が必要となった時に、誰に介護を頼みたいですか?
あなたの親の介護は誰が行いますか? care5.jpg

STEP6.適切な住環境を選択し整備する

高齢期には心身の状態や家族形態が変化し、これまでの住環境が適さないという状況が発生します。
住まいは暮らしの器、基盤となるもの。自宅を改修、介護保険施設に入所する、有料老人ホームへ住み替えなど、ニーズに合わせて住環境を見直すことが必要となります。
在宅介護を選択した場合は、介護しやすいされやすい明るい住環境を整えたいものですね。
介護保険を利用してハード(住宅リフォーム)、ソフト(人によるサービス)、モノ(福祉用具)、という3つの視点から総合的な環境づくりが大切で、ケアマネジャーへの相談が必要です。
また、介護施設や高齢者住宅は心強い味方ですが、選び方が難しく在宅介護よりも費用がかかるため、働きながら介護する方には負担となっているケースが多くみうけられます。まずは地域包括支援センターにご相談しましょう。

STEP7.公的介護保険サービス・民間サービスを活用する

公的介護保険サービスは心強い味方、積極艇に活用しましょう。
しかし、公的介護保険サービスの活用のみではまかなえません。市区町村で提供している高齢福祉サービス(配食、緊急通報、見守り、移送サービス等)、民間、NPO、ボランティア、友人等も組み合わせる視点が大切です。
さまざまな社会資源を活用しマネジメントすることで、QOLを維持し介護のある暮らしを豊かにするアイデアも生まれます。

STEP8.「仕事と介護の両立/ワーク・ケア・ライフ・バランス」を整える

ここまで、地域で行うSTEP1~7をご紹介しましたが、STEP8は勤め先で行います。
職場には「育児介護休業法」により「仕事と介護の両立支援制度」が定められています。近年はこの制度を上手に活用し、自分なりの仕事と介護の両立を実践している人が増えています。
一方、介護の話は職場にはしずらいという声も届いています。介護相談やセミナーを活用しながら自分の介護もオープンにすること、介護が発生する前から自分が利用できる制度を知り備えておくこにより、いざといいうときにあわてず対策をとることが可能となります。

介護は制度みにならず感性や知性、コミュニケーション能力、マネジメント力が必要であり、発揮されます。信頼できる人に相談しながら前に進むことで、自分なりの仕事と介護を探してほしいと願います。