コラム

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FP相談室講師による特別寄稿
2023.06.21

働く人を支えるための介護情報  ~仕事と介護の両立の実際(1)~

働く人を支えるための介護情報  ~仕事と介護の両立の実際(1)~

毎月、FP相談室講師にコラムを執筆していただきます。今回は介護支援専門員 川上由里子さんがご担当です。

ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が介護・福利厚生保険制度の有効活用について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


1.はじめに

働く人が直面する介護、その形は100人100とおりそれぞれ異なります。
誰にも共通していえることは介護を理由に仕事を辞め、介護に専念してはいけないということです。
それでは、どのようにして両立することができるのでしょうか。今回は仕事と介護の両立について具体的に考えていきましょう。

2.さまざまな介護サービスを利用する

仕事と介護を両立できるかどうかは、介護サービスをうまく利用できるかがポイントです。
介護を家族で抱え込むのではなく、ケアマネジャーに相談しながらまずは介護保険サービスを積極的に活用しましょう。
さらに、さまざまな機関が提供する介護保険外サービスも上手に活用することです。食事や運動、配食、家事支援(保険外)ショートステイ(保険外)などニーズにあわせたサービスは、介護者の負担を軽減することができ、その人(親、子)らしい暮らしの実現につながります。つまり働く人の仕事と介護の両立を支援します。

※介護保険サービスの詳細については本稿では割愛します。こちらの記事をご参照ください。
WAM NET(独立行政法人福祉医療機構運営サイト)介護保険制度解説コーナー(WAM NET)
監修:川上由里子 石橋亮一
さまざまな介護サービス.jpg
介護保険外サービスは全額自己負担となるため、早めの情報収集や介護とお金のマネジメントも必要となります。
次に、これらのさまざまなサービスを活用しながら仕事と介護の両立を実践した人のケースをご紹介します。働く人を支えたものは「介護保険制度のサービス」「介護保険以外のサービス」「相談機関(地域、職場)」、そして、「働く人それぞれの工夫やアイデア」です。

3.実例紹介

実例1
40代男性Iさん 母親(要介護2)の在宅介護 父親(自立)の支援 近距離介護
認知症の症状がではじめた母親は介護保険サービスの訪問介護やデイサービスを拒否
毎日仕事前後に両親宅に立ちより介護を行っていたが、体調を崩し離職も考えるように

→オーダーメイドの家事支援利用 両親の家事、食事全般を支援 自分の働く時間確保
 介護保険でとの大きな違いはホームヘルパーを選任しお願いできている安心感。
 職場では介護休暇を取得し通院の付き添いや面談時間を確保。
 在宅医療に助けられながら自宅で両親を看取る。

【介護保険外参考コスト※】 ――――――――――――――――――――――――
家事支援サービス単価(1時間): 民間企業サービス利用料/3,000円(介護保険では224円/1割負担の場合)
月額総利用料金は約200,000円

実例2
50代女性Mさん 母親の介護(要介護1)
認知症が徐々に進行する母の介護を行う父、両親のつらさが伝わり日々の仕事にも集中できず。

→コミュニケーション型介護ロボットを育て両親にプレゼント
  民間企業の緊急通報サービス導入  終活ノートの記載
・小型ロボットと両親が毎日会話や体操を行う。 子世代とのコミュニケーションがとりやすくなり訪問回数が減少。
・市民相談(弁護士・無料)を活用し成年後見制度や家族信託制度など弁護士にも相談。
・介護、医療、住まい、財産など、両親の意向を早い段階から確認記録。
両親が精神的におちつき、自分の仕事に専念できる安心感と時間が生まれた。
相続への対応にも備えることができ落ち着いて仕事も介護もほどよく行えている。

【介護保険外参考コスト※】――――――――――――――――――――――――――――――
緊急通報サービス:民間企業/初期費用/工事料58,000円  月額利用料/7,000円
行政サービス/無料もしくは低額 対象者は一人暮らしや心臓疾患の既往ありなど条件あり
介護ロボット:200,000円(レンタルの場合、月額約90,000円24回払い)

事例3
40代女性Aさん 父親の介護
子育てと父親の介護のダブルケア。父はデイサービスを拒否し施設を検討するも費用負担が大きすぎる。
ケアマネジャーに相談するも解決できず離職を考える

→職場の介護相談を利用しコンサルタントの提案によりデイサービスを「小規模多機能型居宅介護」に変更、
 職場ではテレワーク、介護短時間勤務、積み立て休暇(介護事由)を活用
 状況は改善し父親はデイサービスを好み技術を活かしたモノづくりに励んだ。
 家族全員が納得し、父の人生の終盤のステージ、旅立ちをチームで支えることができた。

【介護保険外参考コスト※】―――――――――――――――――――――――――――――――――
配食サービス :1食800円を8回×2人分 月額12,800円
職場の介護コンサルティング:無料
【介護保険費用】
小規模多機能型居宅介護 15,232円/月+食費、宿泊費、アクティビティ費

※事例1~3参考コストにて表示。コストは企業により異なります。

仕事と介護の両立の実際(2)では、住環境の整え方・職場制度の活用方法について説明をいたします。