コラム

5つの制度の活用事例や新制度の特集コラムを掲載しております。

FP相談室講師による特別寄稿
2023.06.22

働く人を支えるための介護情報  ~仕事と介護の両立の実際(2)~

働く人を支えるための介護情報  ~仕事と介護の両立の実際(2)~

毎月、FP相談室講師にコラムを執筆していただきます。今回は介護支援専門員 川上由里子さんがご担当です。

ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が介護・福利厚生保険制度の有効活用について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


仕事と介護の両立の実際(1)につづき、この記事では住環境の整え方・職場制度の活用方法について説明をいたします。

4.住環境を整える 施設サービスも視野に入れる

住宅リフォームにより介護しやすいされやすい住環境を整えることができますが、長期的な視点に立ち、在宅と施設を検討する意識も大切な両立ポイントです。
高齢者施設数は年々増加し相談者も増えています。
皆さんが驚かれるのは種類の多さ、複雑さ、情報収集と選択の難しさ、そして費用がかかることです。
地域の社会資源(在宅・施設)、家族の介護力、住まい、資金等から自宅か施設かの総合的な検討が必要ですが、支える世代と支えられる親世代の気持ちが一致しないことが多いのも現状です。
早い段階から将来のプランとして介護が必要となった時、住まいをどう整えたいのか、話し合いながら自分たちの考えを持つことが望まれます。そして住まい・介護にかけられるお金や時間を長期的・包括的に捉えておきましょう。

参考資料
全国の介護付有料老人ホーム(特定施設)情報検索 WAM NET
■FP相談室学びのコラム 「高齢者の生活の場について考える」 「高齢の親の施設入居 マイナスイメージをプラスに変えるには」
主な高齢者向け施設・住宅の種類と特徴.jpg
主な高齢者向け施設・住宅の費用(目安)比較.jpg

5.職場の介護休業制度を活用する

職場には、育児・介護休業法の「介護休業制度」を基にした「仕事と介護の両立支援制度」が定められています。
介護は働く人の多くの人が初めて直面する上、長期に及ぶため、職場における仕事と介護の両立支援制度の活用は、介護保険制度と両輪で働く人の両立を支える重要な柱となります。
ここでは法定の介護休業制度をご紹介します。
介護休業制度.jpg
「介護休業」は3回を上限とし分割取得が可能となり、法定の93日を上回る期間を設定している企業も増えていますが、介護に専念するためではなく、主には介護初動期の体制を整える準備期間として設けられています。
長期間休業し職場から離れることよりも、一日単位や半日単位の「介護休暇」「短時間勤務」「テレワーク」「始業・終業時刻の繰り上げ繰り下げ」等を活用した柔軟な働き方を選択することがポイントです。

介護休業を取得した際、申請により受けられる「介護休業給付金」は、従業員の心強い経済的支援ですが、(休業前給与の67%支給)、家計を圧迫するため休業はできない、といった声もきかれます。
介護コラム第1回でお伝えしたように介護はライフプランのひとつとして捉え長期的プランが必要となることがわかるでしょう。

また、制度上の仕組みではありませんが、介護者がオープンに語り合える場を設けている一歩進んだ企業もあります。企業の風土にあわせた支えあいが働く人を助ける力や知恵となります。
本制度はお勤めの企業により異なりますので、自分の職場で利用できる制度の内容、利用方法等の詳細は事前に確認しておきましょう。
職場にも働く皆さんを応援する制度があることを知っておきましょう。

5.おわりに

このように、仕事と介護の両立を上手に行っている人は、公的、公的外サービスを活用し、地域、職場双方の制度を積極的に活用しています。
暗くなりがちな介護ですがサービスの利用時には問題ばかりに目をむけず、親や家族の好きなことや強みを活かし暮らしを彩る工夫もおこなっています。
皆さんはどんな介護をおこないたいでしょうか?

3回に渡り「働く人を支える介護情報」をお伝えしました。お読みいただきありがとうございました。
介護も仕事と同じように全体をマネジメントしながら進むことで、自分らしい介護、働き方が可能となります。
家族や周囲とのコミュニケーションを大切にする。
専門家に積極的に相談し良質な情報を得る。
ニーズにあったサービス(在宅と施設)を上手に選択活用し自分時間も確保。
認知症への対応やお金など早い段階から備えられることを知り備える。
これらは働きながら介護する方に共通していえることです。
人を支えるのは決して簡単なことではありませんが、人間だからこそできる美しい行為です。介護をオープンにしながら進みましょう。
誰かを支える時間が、実りある幸せな時間となりますことを切に願っています。