コラム

5つの制度の活用事例や新制度の特集コラムを掲載しております。

FP相談室講師による特別寄稿
2024.04.24

マイナス金利解除と生活への影響を考える!

マイナス金利解除と生活への影響を考える!

毎月、FP相談室講師にコラムを執筆していただきます。今回はソニーグループ出身で在職中はFP相談室室長として活躍され、現在もFP相談室講師をされている佐々木荘二郎さんに保険コラムを執筆していただきます。

ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師がマイナス金利解除と生活への影響について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


3/20このようなニュースが流れました。
「日銀は、19日まで開いた金融政策決定会合で、マイナス金利政策を解除し、金利を引き上げることを決めました。
日銀による利上げはおよそ17年ぶりで、世界的にも異例な対応が続いてきた日本の金融政策は正常化に向けて大きく転換することになります。」
という内容でした。

■そもそも「マイナス金利政策解除」とはどういうことでしょうか?
金融機関が金利を払ってまで当座のお金を日銀に預けることはあるのでしょうか?
通常はお金を預けて利息をもらうのが普通であるので、金利を払ってまで日銀に預けるとはあり得ませんね。
それが-0.1%というマイナスの金利が設定されてあり、お金を預けるのに金利を払っていたということなのです。
それが「マイナス金利政策」なのです。

そうすることにより、
金融機関は利息を払ってまで日銀にお金を預けるくらいなら、企業や 個人にお金を貸す方がよい → 
お金が市場に回る → 
景気を下支えする!
との思惑で始めたのが「マイナス金利政策」だったのですね。2016年から続いていました。

その「金利のない世界」から「金利のある世界」への転換が「マイナス金利解除」ということです。
-0.1%の金利が0~+0.1%に設定されました。
「2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至った」
(日銀)ということによる政策の転換でした。

これで金融機関も余剰資金を日銀に預けた場合、金利収入があるということになったのです。
今までの金利のない世界から金利のある世界への大転換ということですので、
では世の中はどのように変わるのでしょうか?

■「マイナス金利の解除」が我々の生活にどんな影響があるのかを考えてみましょう!
・預金金利は上がるのでしょうか?
・住宅ローンの変動金利はどうなるのでしょうか?
・住宅ローンの固定金利にも影響するのでしょうか?
・保険の予定利率が上がれば保険料が下がるのでしょうか?
等考えてみましょう。

・預金の金利はどうなる?
銀行はすぐに反応し、預金金利を引き上げましたね。
早くも19日中に三菱UFJ銀行と三井住友銀行は、普通預金の金利を現在の0.001%の20倍に相当する0.02%に引き上げることを決めています。
みずほ銀行、ゆうちょ銀行を含め他の金融機関も追随しました。
銀行が普通預金の金利を引き上げるのは、日本銀行が前回利上げした2007年以来17年ぶりとなります。
これは嬉しいことですね。

・住宅ローン金利はどうなる?
さて気になるのは住宅ローンの金利です。
現在、住宅ローンを組んでいる方のほぼ70%以上の方が変動金利を使っています。
変動金利が上昇に転じることになった場合、影響を受ける方がほとんどとなるのです。
今回は短期金利の上昇となるので、変動金利を使っている方には心配な状況です。

◎住宅ローン 変動金利
住宅ローンには、ある一定期間、もしくは全期間を据え置く固定金利と、6か月ごとに金利を見直す変動金利があります。
固定金利は長期金利(10年ものの国債の金利)の影響を受け、変動金利は金融機関が独自に決める短プラ(短期プライムレート)の影響を受けるのですが、短プラは据え置かれており、現在動いてはいません。

とある優遇金利を提供している金融機関の4/1現在の金利を見てみましょう。
→変動金利 2024年2月~4月の推移(4/1現在)優遇金利表より

変動金利は、短プラが据え置かれているので、今のところほとんど変化はないようです。
※黒字は前月と同率、青字は前月よりダウン、赤字は前月より上昇した場合を表す。

金融機関 2月 3月 4月
Aネット銀行 0.297 0.297 0.297
Bメガバンク 0.625 0.625 0.675
C信託銀行 0.425 0.425 0.330







◎住宅ローン固定金利

それでは固定金利を見てみましょう。
今回のマイナス金利の解除は、基本的に短期金利の変更です。
基本的に長期の金利に連動する固定金利には影響はないはずですが、長期金利も日々変動はしているので、金利は動いています。
・固定金利 2024年2月~4月の推移抜粋(10年固定・20年超のみ表示)ですが、長期金利(10年もの国債の金利)が上昇する場合、
住宅ローンの固定金利に影響がありますが、長期の金利はすでに上昇中で、各金融機関の金利変動はまちまちです。
今回のマイナス金利解除の直接の影響はあまりないと思われます。(以下金利表参照)

10年固定金利

金融機関 2月 3月 4月
Aネット銀行 0.960 1.160 1.290
Bメガバンク 1.700 1.650 1.700
C信託銀行 1.320 1.320 1.225


20年超固定金利

金融機関 2月 3月 4月
Aネット銀行 2.199 2.374 2.390
Bメガバンク 1.970 1.920 1.800
C信託銀行 2.050 1.950 1.855

変動金利にしても固定金利にしても、大きな動きはありませんが、いずれにしても、今後は金利は上昇の方向です!
住宅ローンを組んでいる方は、金利上昇に備え、繰り上げ返済で、早めに残高を減らす等、金利変動に対する対策を立てておくことをお勧めします。

・生命保険の予定利率
生命保険の保険料は、各保険会社が、予定利率・予定事業費率・予定死亡率で決定をしています。
予定利率は保険の割引率と言われ、予定利率が上昇すると保険料は下がります。
予定利率の参考となるのは、国が決めている標準利率ですが、それは現在0.25%と、低くなっています。
ただ今回のマイナス金利の解除での予定利率への影響はすぐにあるとは思われないので、当分変更はないのではないでしょうか?

ここで思い起こしたいことは、ソニーグループの福利厚生保険制度の「総合個人年金」の予定利率です。
現在のような低金利の時代でもずっと1.25%を保っています。頼もしいですね。
安全で着実に増やすことのできる商品ということがこのことで実感されます。より多くの方に利用していただきたいですね。

■まとめ
今回の「マイナス金利解除」は今後金利が上昇する方向に向かうということを意味しますが、
日本の金融緩和の状態が大きく変わったわけではなく、金利はゆっくりとした上昇に入ったということです。
お金を預ける、もしくは運用をする面では金利のある世界は基本的にはメリットありで喜ぶべきことと言えます。

とはいっても、お金を借りる場合には注意が必要です。
特に住宅ローンは、絶対金額が大きいので、金利が低くても長期間に渡っての利息負担は大きく、そのうえで変動金利の場合、
金利は6か月ごとの見直しとなるため、上昇の方向の場合、急激に返済額が上がることがないわけではありません。そういった場合の対策を考えておきましょう!

ポイントは 
1)金利が低く、ローン控除の還付があるからといって借りすぎは禁物!
返済可能な年齢・返済比率・金利情勢等から総合的に判断をして、ローンの額は抑えめに!
2)変動金利と固定金利をミックスすることも考慮に入れましょう! 
3)金利上昇の際、繰り上げ返済で早めに残高を減らすことができるよう準備資金を持っておくことも有効な対策になります。
残高が少なければ少ないほど、金利上昇によるリスクは低くなるのです。