コラム

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FP相談室講師による特別寄稿
2026.05.22

生活習慣病、早期治療をした場合と遅れた場合 経済的負担やリスクの違い①

生活習慣病、早期治療をした場合と遅れた場合  経済的負担やリスクの違い①

毎月、FP相談室講師にコラムを執筆していただきます。今回は一色FPオフィスの代表であり、FP相談室講師でもある一色徹太さんに保険コラムを執筆していただきます。

ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師がライフプランについて解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


日本における長寿化は続いており、厚生労働省の「令和6年 簡易生命表」によると、女性の平均寿命は87.13年(前年比0.01年下降)、男性の平均寿命は81.09年(前年比変わらず)となっています。
国別でみると、女性は40年連続で世界1位です。なお、平均寿命とは「0歳の平均余命」のことです。
一方、同省の「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)」によると、死亡数は160万5298人で、前年の157万6016人より2万9282人増加しています。
死亡率(人口千対)は13.3で、こちらも前年の13.0より上昇しています。
令和6年の死亡数を死因順位別にみると、第1位は悪性新生物(腫瘍)、第2位は心疾患(高血圧性を除く)、第3位は老衰、第4位は脳血管疾患となっています。
当コラムでは、死亡リスクのある心疾患や脳血管疾患につながりかねない、いわゆる「生活習慣病」にスポットを当て、早期治療のメリットや経済的負担等について確認します。

1.生活習慣病とは

生活習慣病は、比較的新しい概念です。
以前は「成人病」と呼ばれていました。
日本人の生活習慣(食生活、運動、飲酒、喫煙、休養、精神状態等)や社会環境の変化に伴い多く見られるようになった疾病を生活習慣病といいます。
一般的には「がん(悪性新生物)」、「心疾患」、「脳血管疾患」、「糖尿病」、「高血圧症」、「脂質異常症」、「慢性腎臓病」、「高尿酸血症や痛風」、「動脈硬化症」、「肥満症」などが生活習慣病と呼ばれています。

民間生命保険会社の医療保険でも、近年、生活習慣病を保障する商品が増えてきました。
「生活習慣病保障特約」や「8大疾病保障特約」などで、例えば生活習慣病で入院した場合、「生活習慣病保障特約」を付帯していると、通常の入院給付金に加え、同額の生活習慣病入院給付金(または一時金)が支給されます。
呼称はさまざまですが、特約で付帯することが多く、自らが抱える生活習慣病のリスクに備えることができます。

2.高血圧疾患を放置するリスク

健康診断や人間ドックで高血圧を指摘されたことがある方は多いのではないでしょうか。
高血圧を放置すると、動脈硬化を招く可能性がある他、将来、脳や心臓、腎臓に関わる重篤な病気を引き起こすリスクが高まります。
高血圧疾患に関するデータを見てみましょう。
高血圧疾患に関する各種データ.jpg
特筆すべきは、①の約4,300万人という推計患者数の多さです。
2026年4月1日現在の日本の総人口は1億2286万人(概算値・総務省統計局公表)ですので、およそ3人に1人が高血圧疾患を抱えていると推測されます。
治療を受けている総患者数も1,609万人と非常に多くなっています。
高血圧疾患にかかる年間国民医療費(高血圧疾患の治療を受けている患者一人あたりの年間医療費、以下同じ)は105,953円となっており、かなりの負担といえます。高血圧を放置すると、前述の死因第2位の心疾患や第4位の脳血管疾患など命に関わる疾病を招く可能性があるため、早めの対応を心掛けたいものです。

3.脂質異常症(高脂血症)を放置するリスク

次に、脂質異常症(高脂血症)について見てみましょう。
脂質異常症は、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が基準値から外れることをいいます。
脂質異常症により動脈硬化が進行した場合、先ほどの高血圧同様、心疾患や脳血管疾患を発症するリスクが高まります。
脂質異常症は自覚症状がほとんどないことが特徴です。
脂質異常症に関するデータを、心疾患と脳血管疾患に分けて見てみましょう。
脂質異常症に関する各種データ①(心疾患).jpg
ここでは、「脂質異常症を放置して動脈硬化となってしまい、急性心筋梗塞等の心疾患を発症」と仮定しています。
心疾患は死因別順位で悪性新生物に次ぐ第2位になっていることもあり、やはり②の年間死亡者数の多さが注目されます。
また、心疾患にかかる年間国民医療費は711,245円とかなりの高額になっています。
治療費負担の大きさに加え、心疾患による突然死は、遺族の方にも大変な悲しみと経済的負担をもたらすことになります。
心疾患を招く可能性のある脂質異常症については、日頃から予防を心掛け、該当する場合は早期治療を行いたいものです。
脂質異常症に関する各種データ②(脳血管疾患).jpg
今度は、脳血管疾患について見てみましょう。ここでは、「脂質異常症を放置して動脈硬化となってしまい、脳梗塞等の脳血管疾患を発症」と仮定しています。  脳血管疾患も、死因別順位で第4位になっていることもあり、②の年間死亡者数の多さが注目されます。
また、脳血管疾患にかかる年間国民医療費は1,036,222円と100万円を超える大きな額になっており、治療にかかる経済的負担は相当なものといえます。
加えて脳血管疾患も、心疾患同様、突然死に直結する可能性があるため、脳血管疾患を招く可能性のある脂質異常症については、やはり早めの対応を行ってリスクを軽減しておきたいところです。

蛇足ながら、筆者も若い頃から肥満気味で血圧がやや高く、また脂質異常症(LDLコレステロール値(いわゆる悪玉コレステロール値のこと)が高い)でもあり、健康診断や人間ドックで指摘をたびたび受けていました。
このため一定年齢時にかかりつけ医に相談し、投薬などの対応を行いました(その結果、現在の数値は極めて安定しています)。
やはり心疾患や脳血管疾患などで突然死に至ることだけは避けたいため、早めの対応を行ってよかったと感じています。

4.糖尿病を放置するリスク

次に、糖尿病について見てみましょう。
糖尿病に関するデータ.jpg
糖尿病は「国民病」と呼ばれることもあり、①のとおり治療を受けている患者数は非常に多くなっています。
日本における糖尿病患者数は、生活習慣と社会環境の変化に伴って急速に増加しています。
糖尿病は放置すると網膜症・腎症・神経障害などの合併症を引き起こし、末期には失明する場合や、透析治療が必要となることもあります。
さらに糖尿病は、前述の虚血性心疾患などの心疾患の発症・進展を促進することも知られています。

これらの合併症は患者のQOLを著しく低下させます。
糖尿病は、今後も社会の高齢化にしたがって増大するものと考えられており、健康診断や人間ドックで空腹時血糖やHbA1cの異常を指摘された場合は、早めに再検査を受けておきたいところです。
糖尿病にかかる年間国民医療費は207,166円と、他の疾病と比較すると少額のように思えますが、糖尿病の治療期間は一般的に非常に長いため、この金額が毎年かかることに留意する必要があります。
なお、糖尿病の病型は、(1)1型糖尿病、(2)2型糖尿病、(3)その他、(4)妊娠糖尿病に大別できます。
糖尿病の発症要因としては、遺伝的要因と環境要因が重要ですが、特に2型では生活習慣が環境因子として重要であり、日本における糖尿病の大部分を占めるのは2型糖尿病です。

5.腎疾患を放置するリスク

最後に、腎疾患(ここでは慢性腎臓病を取り上げます)について見てみましょう。
腎疾患に関するデータ.jpg
ここでは、「腎機能の各診断項目の異常を放置して慢性腎臓病を発症」と仮定しています。
 慢性腎臓病 (Chronic Kidney Disease: CKD) は腎障害や腎機能の低下が続く疾病です。
慢性腎臓病が進行すると末期腎不全に至ってしまい,透析療法や腎移植が必要となる場合があります。
日本においては慢性腎臓病の推計患者数は①のとおり約1,480万人と非常に多くなっています。

また透析患者数も約34万人と増加傾向にあり、医療経済的にも大きな問題となっています。
慢性腎臓病に関しては、例えば、クレアチニン値の軽微な上昇傾向が見られた時点で適切な対応を行えば、治療費はわずかで済みます。
生活習慣を改善することによっても、慢性腎臓病を防止することは十分可能ですあるため、初期対応が早ければ経済的負担はわずかなものにとどまります。

しかしながら、クレアチニンの上昇を放置し、治療開始が遅れてしまった場合は、最終的に人工透析が必要になる場合も多く、治療費は高額になることが避けられません。
慢性腎疾患にかかる年間国民医療費は1,653,593円と、今回取り上げた生活習慣病の中で最も高くなっています。
万一慢性腎臓病を発症した場合、治療にかかる経済的負担は相当なものといえます。

さらに日常生活においても、厳しい食事制限(カロリーコントロールや塩分制限など)が求められるなど、不自由を強いられることになります。
腎機能は基本的に老化に伴い衰えるものであり、劇的に改善することは難しいため、早めの治療・対応が強く求められます。

6.健診後の精密検査未受診者の割合

では、健康診断や人間ドックを受診後、「要再検査・要精密検査・要治療等」等の指摘を受けたものの、精密検査(二次検査)を受けていない方はどのくらいいるのでしょうか。
これについて、全国調査は行われていませんが(以前は厚生労働省が行っていましたが、10数年前の調査を最後に中止しています)、以下のようなデータがあります。
健康診断・人間ドックで何らかの異常を指摘されたものの、その後、医療機関を受診していない人の割合.jpg
データにより差はあるものの、どんな母集団においても一定割合で未受診者の方は存在します。
未受診の理由はさまざまですが、ご自身の健康リスクの軽減のためには、やはり早期に受診されることをお勧めします。

7.精密検査費用サポート施策について

これまで見てきた「高血圧疾患」、「脂質異常症(高脂血症)」、「糖尿病」、「腎疾患」は、定期健康診断や人間ドックにおける大変重要な検査項目です。
 そのため、ソニーグループ保障共済会では、社員の皆さまの健康増進を図り、休職・離職リスクを軽減するため、これら4項目にスポットを当てた「精密検査費用サポート施策」を、2026年4月より開始しました。
 セーフティプラン加入者(「本人・ファミリーコース」に加入している本人および退職者本人、ただしEタイプ(傷害のみ保障)を除く)で年齢35歳~64歳の方で、「定期健康診断および人間ドックで「D判定」となった項目(血圧、脂質、血糖、腎臓)」について健診後240日以内に精密検査(二次検査)を受診した場合、最大1万円を実費支給(キャッシュバック)します。

 次回のコラムで本施策について詳しく説明しますが、定期健康診断や人間ドックで指摘された項目について精密検査を受診することは、重症化の早期予防につながり、ご自身の健康増進に大きく寄与します。
万一該当する場合は、決して放置せず、早期に対応するようにしましょう。