コラム

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FP相談室講師による特別寄稿
2026.08.25

忍び寄る生活習慣病の恐怖①

忍び寄る生活習慣病の恐怖①

今回、昭和医科大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科学部門 主任教授 山岸昌先生に
生活習慣病について、精密検査が必要になってしまったという方に向けてコラムを執筆いただきました。

ぜひ、皆さまの健康増進の参考にしてください。
※このコラムは専門医が生活習慣病について解説をしたコラムであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


1.はじめに

この度、生活習慣病でちょっと引っかかっちゃった、そして精密検査が必要になってしまったというような方に対して、一部の検査費用をサポートするという取り組みがソニーグループの福利厚生の一環として行われるということです。

今回はその対象となっている4つの生活習慣病、具体的には脂質異常症、糖尿病、高血圧、慢性腎臓病に関しまして、一体全体これらはどういう病気なんだろうか、また、ほったらかしにするとどうなるんだろうか、日本にどれぐらいの患者さんがいるんだろうか、これらの生活習慣病にどう対処したらいいのだろうかなどについて書いていきたいと思います。

2.脂質異常症:心筋梗塞を予防するためには厳格な脂質管理が大切

血清総コレステロール240mg/dL以上の人は、男性の10%、女性の23%ぐらいと言われていますので、男女足し合わせますと日本人の16%ぐらいに脂質異常症の方がいるだろうということになります。
生活習慣病の中で脂質異常症が注目されている理由の一つは、この異常があると体中の血管がボロボロに痛んでいって、動脈硬化が進む。
その結果、命に関わるような心筋梗塞や脳梗塞といった大きな病気が起こりやすくなるからです。
この流れで当然、こういったような病気を未然に防いでいかないといけないんだという考えが出てきたわけです。

実際に悪玉コレステロールであるLDLコレステロールが140mg/dL以上、中性脂肪が150 mg/dL以上、 善玉コレステロールであるHDLコレステロールが40mg/dL未満である場合は、心臓に栄養を与えている冠動脈という血管に動脈硬化がおこってまいりまして、狭心症や心筋梗塞、心不全のリスクが高くなることが国内の145万人の解析データから明らかになっています。

一方、脳卒中はどうかと申しますと、心臓の病気ほど脂質異常症の影響を受けていないようにも見えますが、ここにも理由がございます。
ご存知かと思いますが、脳卒中という病気は、脳梗塞と脳出血などを足し合わせた疾患名です。
脳卒中の中で、脳梗塞は心筋梗塞と同じように血管が詰まる病気ですので、LDLコレステロールは上がれば上がるほどリスクが上がってまいりますが、脳出血はどちらかというと高血圧の影響を色濃く受ける疾患だということが知られておりまして、最近の研究ではLDLコレステロールが極端に低い人たちでは、むしろ脳出血のリスクが上がるというふうなこともわかってきました。
そのため、脳出血と脳梗塞を一緒くたにした脳卒中として解析してしまいますと、LDLコレステロールの影響が相殺されてしまうわけです。

上記のエビデンスから、脂質異常症の診断基準ではLDLコレステロールが140mg/dL以上、中性脂肪が150 mg/dL以上、 HDLコレステロールが40mg/dL未満をそれぞれ高LDLコレステロール血症、高中性脂肪(トリグリセライド)血症、低HDLコレステロール血症としています。

なんと言いましても、この脂質異常ってのは動脈硬化と深いつながりがあるわけです。
つまり、脂質異常症を是正するということの第一義的な目標は、動脈硬化性疾患を予防することにあるということになります。
そのため、日本の動脈硬化学会では、動脈硬化性疾患のリスクに応じたカテゴリー分類を提唱しています。
一番重要なポイントは、動脈硬化性疾患の発症リスクの層別化をおこない、いろんな疾患背景を持つ患者さんごとにどれぐらいLDLコレステロールを下げたらいいのかという管理目標値を設定している点です。

まず、血液検査を行うわけですが、その患者さんが動脈硬化の病気をすでに持っているかどうか、これが極めて重要になってまいります。
以前に心筋梗塞や脳血管障害などをやってしまっているという人の場合には、再発のリスクが極めて高いということから、こういう人たちは二次予防のグループに入ってまいります。
仮にこういったような動脈硬化性疾患を持っていなくても、糖尿病や慢性腎臓病、それから足の血管が詰まるような末梢動脈疾患を持っているような場合には、全身の動脈硬化が進みやすいということが知られておりますので、これは即座に高リスクグループになります。
それ以外の人たちにおいては、動脈硬化を起こす他の異常がどれぐらいあるかを点数化いたしまして、将来どれぐらいのリスクを抱えているかを推定してリスクの層別化を行っているわけです。

一般的に動脈硬化に関わる因子は、脂質異常症のほかに、男性、年齢、高血圧、耐糖能異常、それから喫煙の有無といったようなことが知られていますので、これらのリスクを加味して中リスクグループ、低リスクグループを決定しています。
非薬物療法を基本として低、中、高リスクグループでは、LDLコレステロールがそれぞれ160mg/dL、140mg/dL、120mg/dL未満に到達できるよう努力目標値が設定されています。
非薬物療法の中心は食事運動療法になってまいりますが、一般的には飽和脂肪酸を多く含む乳製品、牛乳、チーズ、脂身の肉、加工食品を控え、食物繊維が豊富な野菜や海藻類を多めに摂るような食事が推奨されています。

3.糖尿病:健康寿命を最も損なう生活習慣病

最近アメリカ心臓協会では、50歳以降の寿命を伸ばすために8つの項目を管理あるいは遵守することが重要であることを報告しています。
8つとは、体重、LDLコレステロール、血圧、血糖、適切な運動、食事、睡眠、そして禁煙
遵守されているグループは、されていないグループに比べて50歳以降の寿命が9歳ほど伸びるということがわかってきました。
その後の研究で寿命に最も悪影響を与えているのが、糖尿病と喫煙であることもわかってきました。

つまり、タバコを吸わないという方にとって生活習慣病の中で一番の命とりの疾患は、糖尿病ということになります。
現在、世界に5億8,900万人の糖尿病の患者さんがいらっしゃるということがわかっておりまして、予備軍はさらに多く6億3,500万人。
世界の医療費の12%に当たる150兆円がこの病気に費やされています。
82万人のデータでは、糖尿病があると寿命が短くなる。
動脈硬化性疾患やがんにかかりやすく、クオリティオブライフを損なう骨粗鬆症や認知症の発症リスクも高くなることがわかってきています。

食後の血糖値スパイクや高血糖の持続により、身体中のタンパク質は糖化変性修飾を受け、機能が劣化し老化したタンパク質であるAGE(終末糖化産物、advanced glycation end products)ができてきます。
このAGEができてきて体の中に蓄積していくことで、実に様々な病気のリスクが上がるんだということがわかってきました。認知症、骨粗鬆症、サルコペニア、動脈硬化性疾患、がん、メタボリック症候群、不妊、男性更年期障害、肝臓病、腎臓病などなど。

私どもの日本人1万人以上を対象とした研究では、生活習慣が歪んでいるとAGEが溜まってくる。
具体的には、甘いものを多く摂ったり、朝ご飯を食べない、睡眠不足、運動不足、慢性的なストレス、喫煙といったような生活習慣の歪みがあると、AGEが溜まってきて動脈硬化が進んでいく。
さらに、そういう人たちは将来いろんな病気をおこしやすく、寿命が短いんだということもわかってきました。

脂肪を多く含む食材を高温で揚げたり焼いたりして調理すると食品中のAGE量が増加することが知られています。
ファーストフードや超加工品などの摂取を控えるとともに精製された糖質を多く含むジュースやお菓子類の過剰摂取にも気をつけることが大切です。

次回のコラムでは、高血圧・慢性腎臓病について取り上げていただき、精密検査判定を受けた場合にどのようなことに注意すべきか解説していただきます。