コラム

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FP相談室講師による特別寄稿
2022.11.24

定年退職時・再雇用時のタイミングで考える保険の見直しと老後資金(1)

定年退職時・再雇用時のタイミングで考える保険の見直しと老後資金(1)

毎月(株)ポラーノ・コンサルティング代表のファイナンシャルプランナーであり、FP相談室講師でもある深澤泉さんに保険コラムを執筆していただきます。
著者の深澤さんはFP相談室設立当初よりFP相談を担当されており、 独立後も外部コンサルタントとして各TECの相談を担当。会社の各種制度を熟知して、ソニー社員ならではの悩みを解決していらっしゃいます。
ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が福利厚生保険制度について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


1.定年退職時に実行したい保険の見直し

私たちFPが定年退職間近の人にアドバイスするポイントのひとつに、生命保険の見直しがあります。定年退職後に完全にリタイアすれば、給与収入はなくなり、65歳からは公的年金という定期的な収入に変化します。
60歳以降再雇用を選択して、最長65歳まで継続して収入を得る選択肢もあります。厚生年金の被保険者として再雇用で働けば、65歳以降の老齢厚生年金が若干増額されるとともに、金融資産のさらなる増加を見込むことができます。

全体として収入は下がるケースが多いものの、子どものいる世帯において、定年退職時である60歳近辺は、子どもの大学卒業・就職・結婚で、家族構成に変化のある時期でもあり、保障のプランニングにおいて、保険商品による保障のニーズが相対的に低下していく時期となります。
そのため、保障に関して保険商品に頼るべきかどうかについて、チェックすることが必要です。

2.定年退職時・再雇用時の保険の見直し方法

(1)死亡保障
子どもが幼い頃に加入した生命保険は、通常、自分自身が死亡した場合に、今後かかることが予想される教育費を含めた必要保障額を設定して加入します。
ところが定年退職時にはその子がすでに大学を卒業していたり、あと数年で大学を卒業するという時期になっていることが考えられます。当初から死亡保険金額を見直していない場合は、定年退職時の死亡保険金額は高すぎていることになります。
そこで、定年退職時には、保険金額を減額したり、保有する金融資産の額によっては解約することを検討しましょう。

子どもがいない世帯では、自分や配偶者が死亡した場合に、その後の生活費について公的年金の遺族給付と退職一時金を含めた金融資産でまかなえるようであれば、生命保険による死亡保障は不要です。

十分な貯蓄をお持ちでない場合、ご自身が亡くなられた場合の葬儀費用や、残された配偶者の生活費として、死亡保障は1,000万円程度確保されておくと安心です。

(2)医療保障
年齢を重ねてきて、心配なのは医療保障です。
ソニーグループの任意継続被保険者や、老齢厚生年金の受給権が発生したら75歳まで加入できる特例退職被保険者の場合は、現在加入しているソニー健保組合と同様の保障が確保できます。したがって、その期間中の高額療養費の給付により、健康保険適用の医療費の自己負担額が1ヵ月2万円ですみます。

しかし、健康保険が適用されず自己負担額が大きくなる先進医療や差額ベッドなどの医療サービスを受けるのかどうか、75歳以降の医療保障をどのように確保するのか、入院が長期化した場合にどのように対応するか、などの点について決めておきましょう。
これらのポイントについて保険商品でカバーするのであれば、そのニーズに合致したものであるかの点検をしていただきたいと思います。

注目しておきたいのは、2022年10月から、75歳以上で一定以上の所得のある人は、医療費の窓口負担が2割になることです。
例えば2人以上の世帯で、公的年金の老齢給付・企業年金(DC含む)とその他の所得金額(必要経費控除後)の合計額が320万円以上になると、世帯全員が2割負担になります(2025年9月までは負担軽減措置があります)。

この世代の高額療養費として、年収370万円以内で住民税非課税世帯でない場合は、世帯単位で月額57,600円の自己負担の上限額がありますが、後期高齢者となってからの継続した医療費の支出に備えておくことは安心感につながると思います。
この上限額の20年分(95歳まで=約50,000円×20年=100万円)と、先進医療や差額ベッドなどの保険適用外の医療費約300万円の合計400万円程度の医療費用を、現預金や保険商品で確保しておくと安心です。

次の定年退職時・再雇用時のタイミングで考える保険の見直しと老後資金(2)では、老後資金の考え方について説明をいたします。