コラム

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FP相談室講師による特別寄稿
2022.11.25

定年退職時・再雇用時のタイミングで考える保険の見直しと老後資金(2)

定年退職時・再雇用時のタイミングで考える保険の見直しと老後資金(2)

毎月(株)ポラーノ・コンサルティング代表のファイナンシャルプランナーであり、FP相談室講師でもある深澤泉さんに保険コラムを執筆していただきます。
著者の深澤さんはFP相談室設立当初よりFP相談を担当されており、 独立後も外部コンサルタントとして各TECの相談を担当。会社の各種制度を熟知して、ソニー社員ならではの悩みを解決していらっしゃいます。
ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が福利厚生保険制度について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


定年退職時・再雇用時のタイミングで考える保険の見直しと老後資金(1)につづき、この記事では老後資金に関する考え方についてポイントを解説をしていきます。

3.定年退職時の老後資金に関する考え方

定年退職時は、その後の老後資金の確保の状況について確認をする時期であると言えます。様々な観点から見ていきましょう。

(1)退職一時金の運用
定年退職すると、今までの給与が得られなくなるため、一般的には金融資産の運用においてリスク許容度が低くなります。
そのため、一般的に資産配分については、安全性の高い金融商品の割合を今までよりも増やしていくことが望ましいと言えます。これは確定拠出年金の年金資産を運用しながら受け取る場合も同様です。

もちろん、これらはその人の総資産を考慮して判断すべきです。したがって、確定拠出年金だけの資産配分ではなく、それ以外の金融資産、あるいは配偶者を含めた金融資産を勘案して決定されるべきです。
例えば再雇用でその後継続して収入がある人や、余裕資金を保有している人は、リスクをとってリターンを狙うこともひとつの選択肢です。

(2)総合個人年金の活用
ソニーグループの社員で「総合個人年金」を積み立てている人は、定年退職時に、退職一時金などのまとまった資金を「退職時一時積立」として年金原資を増やすことができます。
安全性が高い商品ですが、予定利率は年1.25%と高い水準を維持しています。ただし預入額の1.3%に相当する額が手数料として差し引かれます。

再雇用を選択する場合には、積み立てを継続することができます。
総合個人年金のメリットとして、10年、15年、20年といった確定年金のほか、保証期間のついた終身年金や夫婦年金のように、公的年金の上乗せ年金となる受け取り方があります。
長生きリスクに備えるためのひとつの選択肢とするために、総合個人年金を在職時に始めておきましょう。

(3)保障から資産形成へ
前述のように、今まで加入していた生命保険の保障のニーズが減少して、死亡保険金を減額したり解約した場合に捻出した資金は、定年後完全にリタイアする人にとっては支出が軽減することになるので、公的年金受給までの期間の金融資産の取り崩し額を抑えることができます。

再雇用等で継続して収入を得ることができる人にとっては、公的年金受給までの期間についてその資金を積み立て、資産形成に回すこともできます。活用する制度や金融商品については、以下の(4)、(5)も参考にしてください。

(4)つみたてNISAやiDeCoの活用
(1)の後段で述べたように、リスクをとってリターンを狙う場合、投資信託を活用して、分散投資によるリスクを軽減する方法があります。
その場合でも、投資時期を集中させると、過度にリスクを取ることになります。できるだけ投資時期を分散することが望ましいと言えます。

それを具現化した制度が、つみたてNISAです。年間の積立額は40万円で、投資商品は投資信託等に限定されています。
最も大きな特徴は、積み立てた年を含め20年間の非課税期間があり、その間売却して運用収益が出た場合でもそれに課税されることはありません。

再雇用を選択する人は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入することができます。投資信託・預金・保険商品などを最長65歳まで積み立てて、老後資金とするものです。
掛金は全額所得控除されるため、所得税・住民税が軽減されます。受け取りについても退職所得・公的年金としての有利な税制が適用されます。

(5)公的年金を増やす
20歳から就職までの期間に国民年金に加入していなかった人は、老齢基礎年金が満額になりません。
60歳以降定年退職して再雇用や再就職を選択しない場合は、60歳以上で国民年金に任意加入する方法があります。
所定の届出を行って、毎月国民年金保険料を支払います。任意加入すれば、前述のiDeCoに65歳まで加入することもできます。

60歳以降も会社で働く場合は、厚生年金に引き続き加入することとなりますので、将来の年金受取額も増えることになります。

4.さいごに

定年退職や再雇用はライフプランにおいて大きな転換点です。
ご自身のお金周りの状況をしっかりと把握して、的確な判断を下す必要があります。
私たちの様な専門家のアドバイスを受けながら、実行していきましょう。