コラム

5つの制度の活用事例や新制度の特集コラムを掲載しております。

FP相談室講師による特別寄稿
2023.02.24

先進医療とその費用への備え方(1)

先進医療とその費用への備え方(1)

毎月(株)ポラーノ・コンサルティング代表のファイナンシャルプランナーであり、FP相談室講師でもある深澤泉さんに保険コラムを執筆していただきます。
著者の深澤さんはFP相談室設立当初よりFP相談を担当されており、 独立後も外部コンサルタントとして各TECの相談を担当。会社の各種制度を熟知して、ソニー社員ならではの悩みを解決していらっしゃいます。
ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が先進医療について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


1.はじめに

一般的な診療では完治が困難な疾病などを克服するため、先進医療の受診を積極的に考えている人が増えているように感じます。今回は先進医療の全体像と、その費用をカバーする方法について解説します。

2.先進医療とは

先進医療とは最先端の技術であり、まだ保険診療として認められていない医療技術で、厚生労働省で一定の安全性・有効性を個別に確認したものです。
そして、将来的に保険診療となったり、保険診療とならずに先進医療自体を取り下げられたりすることがあります。

2023年1月1日現在、先進医療は86種類を数えます。
このうち、先進医療技術とともに用いる医薬品や医療機器等について、法律上の承認・認証・適用があるものや、人体への影響が極めて小さい先進医療A(29種類)と、法律上の承認等が得られていない医薬品や医療機器を用いた技術や、先進医療の実施に当たって重点的な環境や評価が必要とされる先進医療B(57種類)があります。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan03.html

先進医療はどこでも受診できるわけではありません。
医療機器や診療体制などの基準を満たし、厚生労働省が認めた指定医療機関で実施される先進医療技術に限定されています。
例えば、がん治療の代表的な治療である重粒子線治療であれば受診できる医療機関は全国で7箇所しかありません。

また、現在先進医療にリストアップされている技術も、将来は変更となることがあります。

3.保険診療対象外の医療費はどうなる?

通常、保険診療を受ける場合は、医療機関の窓口で3割などの一部自己負担で済みます。
しかし、保険診療の対象外である診療を受けた場合は、保険診療部分も含めて公的医療保険から給付されず、全額自己負担となります。

ただし、例外的に保険診療との併用が認められている診療があり、先進医療については先進医療にかかる医療費は全額自己負担ですが、保険診療を併用して受診した保険診療部分については、一部自己負担で受診することができるのです。

4.先進医療の費用はどれくらい?

先進医療の医療費は高額であるということがよく言われます。
例えば、先進医療で高額な診療の代表なものとして、がん治療の最先端技術である「重粒子線治療」や「陽子線治療」があります。
これらは、がん細胞を破壊する力の強い放射線を用いるもので、早期に診療することができれば根治が可能です。
治療に痛みがなく、がん周辺の臓器を損なわず、手術による傷跡が残りません。高齢者でも受診でき、社会復帰までの時間が短くなっています。
医療機関により異なりますが、いずれもおおむね320万円~330万円程度と高額となっています。
なお、重粒子線治療や陽子線治療の中には、一部保険診療となっているものがあります。

5.先進医療の留意点

先進医療は高額な医療費がかかるという点以外に、いくつかの留意点があります。

前述のように先進医療を受診できる医療機関は限定されています。自宅から遠い場所にあることが少なくありません。
また、すぐに受診できないケースも考えられます。

がんの治療において、すべてのがんについて重粒子線治療や陽子線治療が適応とならない場合があることにも注意が必要です。
胃や大腸など蠕動(ぜんどう)運動を伴う臓器のがんでないこと、がん細胞の広範な転移がないこと、同じ部位に過去に放射線治療を受けたことがないことなど、様々な要件があります。

将来的に先進医療とならないケースも想定すべきです。
例えば、白内障の治療方法のひとつである「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は、かつて先進医療のひとつでした。
しかし、その有効性や効率性が十分に示されていないことから、2020年4月から評価療養である先進医療から削除され、選定療養に移行しました。

先進医療とその費用への備え方(2)では、先進医療に備える方法について説明をいたします。