コラム

5つの制度の活用事例や新制度の特集コラムを掲載しております。

FP相談室講師による特別寄稿
2023.05.24

働く人を支えるための介護情報  ~働きながらの介護の実際と進め方(1)~

働く人を支えるための介護情報  ~働きながらの介護の実際と進め方(1)~

毎月、FP相談室講師にコラムを執筆していただきます。今回は介護支援専門員 川上由里子さんがご担当です。

ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が介護・福利厚生保険制度の有効活用について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


はじめに

ある日突然する訪れる働きながらの介護、いざその立場になってみると「誰に相談したらいいの?」「費用はどのくらいかかるの?」「仕事は続けられるの?」と様々な不安や疑問に遭遇します。
介護はプロジェクトと考え、一人で抱え込まずにさまざまなサービスや制度を利用しながら介護全体のイメージを描くことが大切です。
働きながらの介護を総合的、長期的に捉えることができると、支えられる側、支える側、双方にとってのマネジメントが可能となります。
今回は仕事をしながら介護する人の行動についてステップを踏んでご紹介します。順番というよりも同時に進むと考えてください。
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STEP1.支援期における親の生活状況を確認

「最近外出が減り物忘れが激しい。認知症になる前にしておくべきことは?」「将来の親の介護が不安。今からできることで備えたい。」近年は介護が始まる前の段階で相談に訪れる方が増えました。
親の暮らしの変化を感じたら、改めて普段の生活状況を確認しましょう。家族であっても親の生活習慣や健康状態、交友関係、金銭管理状況、資産管理など子世代は意外と知らないものです。
実は、介護に入る前の時期からのかかわりや備えが介護に大きく影響します。観察とともにコミュニケーションと家族の意志や希望の確認が大切です。
早い段階から備えることで漠然とした不安を前向きな備えの気持ちに変化させている人も増えています。

STEP2.現在の状況を把握し整理しましょう

あわてて高額な介護用品を購入したり、仕事を辞める等大きな決意をする前に、まずは現在の状況を把握し整理しましょう。
そのためには、かかりつけ医などに現在の病状、治療方針、日常生活動作の変化、リハビリの最終目標などを確認することが必要です。これらを無視しては長期的なプランはたてられません。
例えば、判断能力の低下や行動の変化は加齢による物忘れか、認知症という病気なのか、一時的なせん妄状態か、によって介護サービスの選択や住環境の整え方も大きく異なります。現状を正確に捉えたうえで、本人の意思、家族の介護生活への不安や問題、希望を話し合うことが大切です。

STEP3.地域包括支援センターに相談 
介護保険制度を理解しサービスを活用 介護はプロにまかせる

地域包括支援センターは、全国の市区町村にある高齢者の介護や生活に関するよろず相談窓口。
社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されています。
相談は電話、面談、いずれも無料。介護保険制度の活用方法や介護予防に関する地域の有益な情報を得ることが可能です。この地域での相談機関を知ることが仕事と介護の両立を支える大切な情報となります。
介護保険サービスを受けるためには、地域包括支援センターや市区町村の窓口に申請をし、要介護認定を受けることが必要です。
訪問、通所、短期入所、地域密着型サービス、施設サービス等、サービスを選んで活用します。福祉用具の購入と住宅改修には助成金がでます。必要なサービスをケマネジャーに相談しながら選び活用します。

STEP4.信頼できるケアマネジャーを選びケアプランを作成する

在宅サービスをうけるためには、ケアプラン(ケアマネジャーが作る介護サービス計画書)を作成します。
信頼できるケアマネジャーを選び、困っていることや希望を伝えます。働いている介護者は、この初回面談には同席いただくべきタイミングです。
ケアマネジャーは本人や家族から十分なヒアリングを行い、専門的なケアマネジメントを行います。その後、各サービス事業者と契約し介護、及び介護予防サービスが開始。ケアプランは被介護者の自立を促すプランですが、働いている介護者が、職場で利用できる両立支援制度、関われる時間帯や曜日などを伝えることでよりチーム力を活かしたプランが描けます。
要支援1.2となった方については、地域包括支援センターの相談員に介護予防ケアプランを作成してもらい、介護予防サービスを利用します。
筆者の相談にはセコンドオピニオン的に介護コンサルを活用する人もいます。担当ケアマネジャーを主軸として、その他の相談者を持つことも安心感につながることと思います。

働きながらの介護の実際と進め方(2)では、STEP5以降の介護と仕事の両立方法の具体的な手順について説明をいたします。