コラム

5つの制度の活用事例や新制度の特集コラムを掲載しております。

FP相談室講師による特別寄稿
2024.01.22

自分に必要な死亡保障額の目安はどのくらい?(1)
~家族構成ごとの保障額目安~

自分に必要な死亡保障額の目安はどのくらい?(1)<br />~家族構成ごとの保障額目安~

毎月、FP相談室講師にコラムを執筆していただきます。今回は(株)ポラーノ・コンサルティング代表のファイナンシャルプランナーであり、FP相談室講師でもある深澤泉さんがご担当です。
著者の深澤さんはFP相談室設立当初よりFP相談を担当されており、 独立後も外部コンサルタントとして各TECの相談を担当。会社の各種制度を熟知して、ソニー社員ならではの悩みを解決していらっしゃいます。
ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が死亡保障額について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


1.はじめに

私たちの生活設計上のリスクに、「収入の担い手の死亡」があります。
これにより、死亡した人が生きていれば得たであろう収入が途絶え、生活を共にする家族が困窮する場合があります。
このような状況を防ぐために、生命保険というツールがあります。カバーすべきリスクを貯蓄で備えるには、一般的に金額がかなり大きくなることが多いため、保険料を支払ってリスクを移転するという生命保険の特徴を活用するのです。
死亡保障額を少なくすれば保険料は少なくてすみますが、十分な保障が得られない場合があります。逆に死亡保障額を必要以上に高額にすれば安心感は得られますが、毎月の保険料の負担が大きくなります。
今回は、自分に必要な死亡保障額を設計する上での基本的な考え方と、その目安について解説します。

2.死亡保障額の算出

ここで「死亡保障額」は、「死亡保険金額」とします。
死亡保険金額の設定は、ムダな保険料負担をしないために重要です。基本的に、以下の方法で算出します。

<遺族に必要な資金=以下の①~⑤の合計額:A>
① 死亡時にかかる資金
葬儀費用・死亡までの医療費・カードローンやクレジットカードの残債・墓など埋葬に係る費用などです。
② 子どもが独立するまでの生活費(住居費以外)
③ 配偶者の平均余命までの生活費(住居費以外)
一般的に、子どもと配偶者がいる場合は現状の生活費の7割、子どもが独立した後の配偶者の平均余命までの生活費は現状の生活費の5割で見込みます。
④ 住居費
賃貸住宅に居住している場合はその期間について家賃の総額を見込みます。
住宅ローンに団体信用生命保険が付保されている場合は、その返済額について居住費に見込み必要はありませんが、管理費・修繕積立金・修繕費用・固定資産税などの費用は見込んでおきましょう。
⑤ 子どもがいる場合は今後の教育費の総額
公立・私立、大学については文系・理系で異なります。

<その人が死亡した後の遺族の収入=以下の①~⑤合計額:B>
① 公的年金の遺族給付(遺族基礎年金・遺族厚生年金)の総額
② 配偶者の公的年金の総額
③ 主たる遺族の収入(公的年金以外)の総額
④ 死亡した人の死亡退職金
⑤ 死亡した人や遺族が保有する金融資産

「A-B」がプラスの数字になる場合は、その額を生命保険で準備することになります。
死亡保険金額は家族構成やライフステージで異なります。また、月々の生活費や子どもの教育資金の設定により、その額は大きく異なります。
したがって本稿では、その細かな計算については行わず、死亡保障額の目安を示しながら解説することとします。

3.家族構成ごとの死亡保障額の目安

(1)シングル
死亡時に係る資金(葬儀費用や死亡までの医療費など)について、保有する金融資産でまかなうことが可能な場合は、生命保険は不要という考え方もあります。
しかし、親などが存命で、保有する金融資産は親に残したいという場合は、生命保険で準備しておきましょう。
300万円~500万円が目安です。ただし、クレジットカードやカードローンなどの利用による債務や税金の支払がある場合は、それらの額を上乗せしておきましょう。

(2)共働き
共働き世帯では、遺された配偶者にも収入があるので、日常生活費で困窮するケースは少ないと言えます。
ただし、遺された配偶者の年収が850万円以上である場合は、公的年金の遺族給付がありません。また、日常生活費で困窮するケースは少ないとはいえ、子どものいる世帯では、その後の教育費の負担が必要です。さらに遺された配偶者の老後資金の準備ができるかどうかも勘案する必要があります。
したがって、死亡保障額の目安は、子どもなしで1,000万円、子ども1人で,2,000万円をベースとし、子どもが1人増えるごとに1,000万円程度増額します。
夫婦の年収のバランスや子どもの教育プランに合わせて調整するとよいでしょう。
また、配偶者が死亡して自分が遺された場合の死亡保障についても、同様の考え方で確保しておきましょう。

ここで、共働き夫婦の場合の死亡保障額の目安についてモデルケースをご紹介します。

<前提条件>
・夫35歳・妻35歳(ともに会社員)・子5歳の3人家族。
・現状の生活費は月額35万円。
・夫の在職中の平均標準報酬額は40万円。
・妻は子が大学を卒業する52歳まで勤務(現在年収400万円)。その間の平均標準報酬額は40万円。
・持家。住宅ローンは団体信用生命保険付きで、夫の死亡で残債は一括返済。
・子の教育プランは公立小学校→私立中学校→私立高校→私立大学・文系とする。
・妻は90歳まで生存することを想定。

<遺族に必要な資金(A)>

①死亡時にかかる資金 葬儀費用など300万円
②子どもが独立するまでの生活費 35万円×7割×12ヵ月×(22歳-5歳)=4,998万円
③配偶者の平均余命までの生活費 35万円×5割×12ヵ月×(90歳-52歳)=7,980万円
④住居費 年間20万円×(90歳-35歳)=1,100万円
⑤子の教育費の総額 1,650万円(子供の学習費調査、教育費負担実態調査)
合計(A) 1億6,028万円


<夫死亡後の遺族の収入(B)>

①遺族基礎年金 (79万円+22万円)×(18歳-5歳)=1,313万円
①遺族厚生年金 40万円×5.481/1,000×300月保証×3/4=49万円
49万円×(65歳-35歳)=1,470万円
①中高齢の寡婦加算 59万円×(65歳-48歳)=1,003万円
②老齢基礎年金 79万円×(90歳-65歳)=1,975万円
②老齢厚生年金 40万円×5.481/1,000×(52歳-22歳)×12月=79万円
79万円×(90歳-65歳)=1,975万円
③妻の今後の収入 400万円×70%(手取り)×(52歳-35歳)=4,760万円
④夫の死亡退職金 600万円
⑤現在の金融資産 800万円
合計(B) 1億3,896万円


(A)-(B)=2,132万円が死亡保障額となり、これを生命保険で準備します。

(3)専業主婦(夫)

遺族が専業主婦(夫)の場合は、遺された配偶者の収入が無いか、あっても金額が少ないため、公的年金の遺族給付について一定額を見込めますが、一般的にその後の生活費をカバーすることは困難です。
公的年金の遺族給付死亡保障額はおのずと高額になってきます。
死亡保障額の目安は、配偶者と子ども1人の場合3,000万円~4,000万円をベースとし、子どもが1人増えるごとに1,000万円~1,500万円程度増額します。
専業主婦(夫)が死亡した時の保障額については、高額である必要はありません。
しかし、子どもがいる場合はベビーシッターや家事代行等の費用が発生する可能性もありますので、一定の保障を備えておきましょう。

自分に必要な死亡保障額の目安はどのくらい?(2)では、死亡保障額を見直すタイミングについて説明をいたします。