コラム

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FP相談室講師による特別寄稿
2024.01.24

自分に必要な死亡保障額の目安はどのくらい?(2)
~死亡保険金額見直しのタイミング~

自分に必要な死亡保障額の目安はどのくらい?(2)<br />~死亡保険金額見直しのタイミング~

毎月、FP相談室講師にコラムを執筆していただきます。今回は(株)ポラーノ・コンサルティング代表のファイナンシャルプランナーであり、FP相談室講師でもある深澤泉さんがご担当です。
著者の深澤さんはFP相談室設立当初よりFP相談を担当されており、 独立後も外部コンサルタントとして各TECの相談を担当。会社の各種制度を熟知して、ソニー社員ならではの悩みを解決していらっしゃいます。
ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が死亡保障額について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


自分に必要な死亡保障額の目安はどのくらい?(1)につづき、この記事では死亡保険金額見直しのタイミングについて説明をいたします。
生命保険で加入すべき保険金額の計算方法を理解して加入したあと、どのような局面で死亡保険金額を見直せばよいのでしょうか。

1.加入後に死亡保障額を見直すタイミング

生命保険に関する相談でよくあるケースのひとつに、加入後に一度も死亡保険金額を見直したことがない、というものがあります。
ライフステージなどに応じて見直してみましょう。

(1)子どもの誕生・独立
子どもが誕生したときは、新たに今後かかる教育資金の準備が必要です。
また、食費などを中心に、日常生活に係る費用がかさんできます。
子どもが誕生するごとに教育費などの増加分として1,000万円~1,500万円をベースに増額しましょう。

逆に子どもがいる世帯で子どもが大学などを卒業して独立したとき、今まで死亡保障額を見直していない場合は、死亡保険金額を引き下げて保険料負担を軽減できる余地があります。
ただし、子どもが18歳になると、配偶者に遺族基礎年金が支払われないことを念頭に、死亡保険金額を見積もる必要があります。

(2)定年退職
60歳以降で定年退職するときには、確定拠出年金や退職一時金を受給することが可能になります。
会社の福利厚生制度である総合個人年金や財形貯蓄、従業員持株会を活用している人は、積み立てた資金を受け取ることができます。
自助努力で資産形成している人は、一定の金額が確保されています。

また、遺族厚生年金の金額は、通算した加入期間で計算されるため、若い時期に比べてその金額が増えています。
さらに、以前と比較して余命年齢に近づいているため、今後必要な生活資金の総額も徐々に減少します。

前述の死亡保険金額の計算式にこれらの点を反映させると、死亡保険金額は以前と比較して減少します。
したがって、定年退職時には一度必要な死亡保険金額を再計算して、引き下げる余地がないかを検討するとよいでしょう。

(3)住宅の購入
住宅の購入時には、一般的に住宅ローンを組んで債務が発生します。
通常、団体信用生命保険に加入しますので、前述の債務額に入れる必要はありません。
よく「住宅を購入して団体信用生命保険に加入したので、生命保険を解約・減額した」という方がいます。
たしかに今まで賃貸住宅に住んでいて、家賃を含めた死亡保障額を設定していれば、団体信用生命保険付きの住宅ローンを組むことによって死亡保障額を引き下げることは可能です。
家賃を考慮しないで設定している場合は、念のため遺しておくべき死亡保険金額を再確認しておきましょう。

また、今後発生するマンションの管理費や修繕積立金、一戸建ての修繕費用、固定資産税が死亡保険金額に盛り込まれていない事例も散見されます。
住宅を購入したときは、特に死亡保険金額の見直しを綿密に行いましょう。

(4)転職・独立
転職先の企業で厚生年金を継続する場合は、公的年金の遺族給付に大きな違いはありませんので、死亡保険金額にも大きな変化はありません。
独立して個人事業主となる場合は、厚生年金に加入できません。その場合、遺族厚生年金の金額が減少するケースがあります。
厚生年金の加入期間が25年以内の人が厚生年金の被保険者であるときに死亡した場合、25年分の遺族厚生年金が保証されます。
しかし、退職後に死亡すると、一定の場合を除き、遺族厚生年金の額は、実際に加入した期間で計算されます。
したがって、個人事業主となる場合には、必要な死亡保険金額を再計算しておきましょう。

2.さいごに

本稿では、死亡保険金額の目安について、算出のプロセスを省略して、結果のみをご紹介しました。
しかし、実際はその綿密な見積もりが重要です。この見積もりについては、特に公的年金の知識が重要になります。
ケースによっては相続税の知識も必要になります。

必要保障額はライフスタイルによって変化していきますので、その時々で必要保障額を見直し、過不足の内容にそなえましょう。
独力では困難な人は、FP相談室を活用して、合理的な死亡保険金額の設計をしてみてはいかがでしょうか。