コラム

5つの制度の活用事例や新制度の特集コラムを掲載しております。

FP相談室講師による特別寄稿
2025.07.25

介護保険外サービスとは ①

介護保険外サービスとは ①

毎月、FP相談室講師にコラムを執筆していただきます。今回は介護支援専門員 川上由里子さんがご担当です。

ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が介護・福利厚生保険制度の有効活用について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


1.はじめに

みなさん こんにちは 
この度、書籍「介護のゴングが鳴ったら1週間でやる8つのこと」をART NEXT社より出版致しました。
2025年1月より執筆を初め、多くの方にわかりやすくを心がけ、丁寧にまとめた1冊です。
介護のゴングが鳴った方、そしてゴングが鳴る前の方、終了のゴングが鳴ろうとしている方に、役立つ情報と応援メッセージをお届けします。 
介護は人の命が循環するその過程です。読み終えて頂いた時に、明日から行動する勇気と、介護という枠に留まらず、人間の人間らしい営みにチャレンジするということを感じていただければ幸いです。
ご興味ご関心のある方はご覧になってくださいね。

介護のゴングが鳴ったら1週間でやる8つのこと.jpg
ART NEXT公式ホームページ:「介護のゴングが鳴ったら1週間でやる8つのこと」紹介ページ

さて、今回の本題に入ります。
本年、我が国はいよいよ団塊世代が後期高齢者となる2025年を迎えました。

加速化する介護、医療、生活支援ニーズ。高齢化率は30%に突入し、さまざまな社会課題解決の要請がこれまで以上に高まります。
10年後の2035年には全人口の3分の1が65歳以上の高齢者となります。
自分らしく健康的な暮らしを心がけながら仕事と介護の両立をすることは、誰にとっても共通の課題です。今回は働きながら介護する人に役立つ介護保険外サービスについてお届けします。

2.高齢者や家族が受けられるサービスの最新動向

介護や介護予防が必要となったら、公的介護保険サービスを積極的に活用することがまずは大切です。
しかし、公的なサービスだけでは賄えない場面が生じます。
また、介護人材不足も懸念され、国は介護の受け皿を、公的介護保険のみならず多様にしていくことが重要と位置付け、これまでにない新しい家族介護や地域デザインの在り方を目標としています。
働きながら介護をする人にとっても、様々な生活支援ニーズに応える介護保険外サービスへの関心が高まっています。

保険外サービスをお伝えする前に、まずはサービスの全体像を再確認してください。
高齢者が受けられるサービスの種類と全体概要については、2023年6月コラム【高齢者が利用できるサービスの種類】にてお伝えしました。
これら全体像を描くことができると、地域包括支援センターやケアマネジャーへ相談する際にも役立ちます。
さまざまな介護サービス.jpg

3.介護保険外サービスと公的介護保険サービスとの違い

今回お伝えする「介護保険外のサービス」は、図表の項目右3つ、市区町村高齢福祉サービス、地域のボランティアやNPOによるサービス、そして民間事業者が提供するサービスです。
介護、介護予防や生活支援、家族支援と内容は多岐に渡り、介護保険制度によるサービスでは対応できないニーズに応えることができます。
なかでも、介護する家族が利用できるサービスは、FP相談室でも、問題解決方法のひとつとして情報提供する機会が増えています。
介護保険制度下サービスとの違いを下の図表にてご確認ください。
公的保険サービスと介護保険外サービスの比較.jpg
公的介護保険制度下のサービスは、40歳以上の国民全員が毎月の介護保険料を支払うことにより、いざ介護が必要となった時に、サービス利用料の1~3割の料金でサービスを利用できる制度です。
利用するためにはお住いの市区町村で「要介護認定」を受け、その要介護状態の判定に応じたサービス利用料の上限範囲内で、必要なサービスを選択、利用する流れとなっています。
サービスの利用者やサービスの種類、金額には制限があり担当のケアマネジャーと相談しながらケアプランを作成します。

一方、介護保険外サービスとは、介護保険でカバーできない生活支援や介護、そして暮らしの継続や楽しみに応えることができます。
「要介護認定」を受けていなくても利用可能ですが、費用は全額自己負担となります。
介護保険サービスとは異なり、民間事業者、NPO等が地域や個人の実情に応じ提供するサービスです。
これらの情報はケアマネジャーや地域包括支援センターがすべてを把握しているわけではありません。
日頃からアンテナを張り、自助努力での情報収集やコーディネートが必要となります。

4.何故介護保険外サービスが必要なのか

近年、国はこの介護保険外サービスの開発や利用を推奨し始めていますが、これから2040年にかけて、急速に高まっていく生活支援などのニーズの受け皿を作る狙いがあります。
公的な在宅介護の限界に着目し、経産省は保険外サービスの普及、収益性・持続性の確保を目指す姿勢を明確にしています。
在宅で介護する人にとっては、食事や家事、そして趣味活動や楽しみの継続など介護保険サービスだけでは解決できない問題がたくさんあるのです。
介護が必要となっても暮らしは継続し、高齢期だからこそ楽しみが実現できることは希望につながります。
その人らしい暮らしの実現のためにはどんなサービスや活動を選択し暮らしにとりいれるのか、各々の工夫やアイデアが活きるオリジナル性の高い領域でもあります。

介護保険外サービスの種類には何があり、どんなことに役立つのか?次号は具体的な利用方法についてご案内します。