コラム

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FP相談室講師による特別寄稿
2026.08.31

忍び寄る生活習慣病の恐怖②

忍び寄る生活習慣病の恐怖②

前回のコラムに引き続き、昭和医科大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科学部門 主任教授 山岸昌先生に
生活習慣病について、精密検査が必要になってしまったという方に向けてコラムを執筆いただきました。

ぜひ、皆さまの健康増進の参考にしてください。
※このコラムは専門医が生活習慣病について解説をしたコラムであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


1.高血圧:最も罹患率の高い生活習慣病

なんといっても一番多い生活習慣病は高血圧です。
日本に4,300万人くらいいるだろうと言われています。
ざっくりと覚えていただくためには、 60歳代の60%、 70歳代の70%ぐらいが高血圧です。

どういうふうに高血圧を診断したらいいのか、それは家で測った血圧が最も重要であるということになります。
診察室での高血圧の診断基準は上の血圧が140mmHg、下の血圧が90 mmHg以上となりますが、現在の高血圧学会のガイドラインでは、診察室の、いわば医師の前で測った血圧よりは家で測った血圧をより重視してくださいということになっています。

家で測った血圧が上135 mmHgか下85 mmHg以上の場合には、高血圧と診断できます。
仮に医師の前で測った血圧が高くても、家で測った血圧が低い場合には、これは医師の前に出たために緊張してたまたま心臓の拍動が高まって血圧が高くなったと判定できますので、こういうのを白衣高血圧と呼びます。

一方、逆に病院でいくら測っても血圧が正常なのに家での血圧が高いというタイプの高血圧もありまして、これは診察室では高血圧と診断できないという意味あいから、仮面高血圧と呼ばれています。

家庭での血圧測定を重視するということですので、正確に家庭で血圧を測っていただくような指導が大切になってまいります。
一般的には朝起きてトイレを済ませたと1~5分間ぐらい休みまして、血圧を2度計り、まあ通常は2度目の血圧が若干低く出ますが、2度とも数値を記載し、1ヶ月の平均値をもって家庭血圧とするのがいいでしょう。
その結果が上135 mmHg、下85 mmHgを切り切っているかどうかで診断するということになります。
そして高齢者の高血圧の特徴は、上の血圧だけが上がり、下の血圧は下がってくるということです。

若い頃は上下ともに高い人が一般的ですが、高齢者では上だけ引っかかるタイプの高血圧が多い。
これは動脈硬化を反映しておりまして加齢や糖尿病などに伴うAGEの蓄積などによって血管が硬くなってきていることの表れとされています。

これまでに行なわれた100万人の検討で、上の血圧が115 mmHg、下の血圧が75 mmHgぐらいから、上の血圧が20mmHg、下の血圧が10 mmHg上がることに将来の心血管系の病気のリスクが2倍ずつ上がるということがわかっています。

また、血圧が高い人では、将来糖尿病の発症リスクが上がることも報告されています。
高血圧の方では、肥満を是正し適正体重を維持すること、塩分やアルコールの過剰摂取を控えることが大切です。

2.慢性腎臓病:透析へつながる生活習慣病

アメリカ心臓協会は、これまで自分たちが主に取り組んできた心臓病、血管病、それから慢性腎臓病は、根っこの部分では糖尿病や肥満などの代謝の病気が関与しているという考え方を表明し、Cardiovascular-Kidney-Metabolic症候群という概念、CKM症候群という概念を提唱してきています。
慢性腎臓病は、糸球体濾過量が60mL/分/1.73m2を切っているかどうか、あるいは、おしっこの検査で蛋白尿があるかないかなどで判定されます。
このいずれかの異常が3ヶ月以上続くような場合には慢性腎臓病と診断できます。

慢性腎臓病では、将来、腎臓病が進行して透析に移行しやすい、あるいは動脈硬化が進行して心筋梗塞や心不全を起こしやすいことが知られています。

現在日本では366.9人に1名が透析を受けていますが、この透析導入の原因疾患のナンバー1は糖尿病です。
今日クリニックで初めて透析をしますという人たちの統計をとりますと、そのうちの40%近くは糖尿病が原因です。
2番目の原因疾患は腎硬化症、つまり高血圧が原因で腎臓の機能が落ちてしまった人たちです。
つまり、糖尿病や高血圧といった生活習慣病が慢性腎臓病、透析の大きな原因疾患になってきているわけです。

そして透析になるとどういう病気で亡くなるかいうことですが、実は死因の第一位が感染症です。
ついで心不全。
3番目はなんとがんです。
この背景の一つには、糖尿病が透析導入の主たる原因疾患になっておりますので、糖尿病肥満関連がんの関与があるのかもしれません。

3.おわりに

こういったような生活習慣病がどうしてこれほどまでに蔓延してきたかと申しますと、それは私どもの体の作りと、私どもを取り囲む環境とが大きくずれてしまっているせいです。
つまり、生活習慣病は、ミスマッチ病とも考えることができます。

進化の過程で人がサルと別れた時点を1年のカレンダーで1月1日0時0分といたしますと、人が現代的生活を行なってきた期間はわずか10分間にしか相当しません。
私どもの体の作りは圧倒的に原始的な生活に順応しているわけです。

一方、飽食の時代になり、ジャンクフードまみれとなった現代の食環境に私たちの体は完全には適用できていないようです。
原始時代、私どもにとって一番のリスクは、獲物を取ることができずに腹ペコになって餓死するいうことでした。
そのため、私どもは食べたものを実に効率的に吸収し、脂肪として蓄える能力に長けています。
そうして飢餓を打ち勝ってきた人たちのみが子孫を残すことができ、最終的には私たちの祖先になりました。
我々には、脈々とエネルギーを溜め込み太らせる遺伝子が引き継がれています。

また、私たちは、海から陸に上がってくる進化の過程で脱水にならないような体を作り上げていきました。結果、1gも塩を無駄にしないようにするため、塩分と水分の精密な貯留機構を腎臓にもたせてきたのです。
ただ、そのことが今日仇となりまして、食塩の過剰摂取などから高血圧の蔓延を招いています。
私どもの環境を30年前に変えることができない今こそ、変貌してしまった環境の中で体の作りに応じた食生活や日々の生活のあり方というものを模索すべき時期が来ているように思います。