コラム

5つの制度の活用事例や新制度の特集コラムを掲載しております。

FP相談室講師による特別寄稿
2024.03.21

総合個人年金の賢い受け取り方(2)
~お金の流れの見える化を実行しましょう!~

総合個人年金の賢い受け取り方(2)<br />~お金の流れの見える化を実行しましょう!~

毎月、FP相談室講師にコラムを執筆していただきます。今回はソニーグループ出身で在職中はFP相談室室長として活躍され、現在もFP相談室講師をされている佐々木荘二郎さんに保険コラムを執筆していただきます。

ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が総合個人年金の受け取り方について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


総合個人年金の賢い受け取り方(1)につづき、この記事では受け取り方について実際にキャッシュフロー表を作成し、お金の流れを確認してみます。

安全で着実にお金の貯まるのが総合個人年金(マイプラン・ガッチリプラン)です。
とても頼もしい福利厚生の貯蓄制度ですが、積み立て終了後ももうひと活躍をして欲しいものです。

というのも厚生年金の受給は基本的に65歳からになります。
また、DC(確定拠出年金)は60歳から75歳の間で受給することになるので、はたして何歳からどのように受け取るのが良いのか迷いますね。
そこで総合個人年金の出番となります。
老後資金のベースとなるのは厚生年金とDCの年金と考え、それに総合個人年金をどのように組み合わせるかにより、老後のファイナンシャルプランの設計がより自由に容易にできるものになるのです。

当コラムでは、厚生年金とDC(確定拠出年金)に、総合個人年金をどう組み合わせるのがより賢いのか、さまざまな老後のファイナンシャルプランの可能性を考えてみましょう。

■問題点と解決法を探る!
60歳以降のファイナンシャルプランに総合個人年金をどう組み合わせるのが良いのか?なにがファイナンシャルプランの問題点になるのかを探し、それをクリアするための解決方法を考えてみましょう。

・多くの方が65歳まで働いていますが、年収はそれ以前よりも下がっています。
・また、ほとんどの方が65歳から厚生年金の受給が始まります。65歳で仕事を離れることが多いために、65歳からDC
(確定拠出年金)の受け取りを開始する方が多いのも現実です。

そうなった場合、

・60歳からの5年間の収入は十分なのでしょうか?
・では、DCを60歳から受け取った場合、最長20年の年金となるので、79歳で終了することになります。
それで十分でしょうか?
・長生きの時代、より長期間に渡って安定収入を得たいものですが、なにか方法はあるのでしょうか?
 基本的に公的年金以外、終身の年金はほとんどありません。

問題の具体的な解決には、お金の流れを知る表を作り、60歳以降のお金の流れを見える化することが重要です!解決のための仮の条件設定を行います。

・マイプランの60歳時点の年金原資が1,000万円あると仮定します。
・60歳からの5年間の年収は300万円と仮定します。
・単身者の受給の例としてありますが、厚生年金は65歳から152万円/年、基礎年金は78万円/年と設定しました。
(専業主婦の妻がある方はその方が65歳になると基礎年金の収入もありますが、ここでは省いています。フルで共働きの方はこの例の倍の額と考えましょう。)
・DC(確定拠出年金)は年金原資が1,800万円で、20年の分割取り崩し年金で年額90万円で65歳から84歳までの受給としています。運用益はゼロとしました。

◎これ以降は収入の流れのPDFファイルを参照しながらお読み下さい。
※コラムの公開時点(2024年3月21日)において収入の流れPDFに記載の数字に誤りがあり、2024年4月25日に修正版のPDFファイルに差し替えをいたしました。 

上記の前提を基に以下のような表を作成してみました。

表0:基本形(CF表の基本設定です。)
表1:60歳~5年間を埋める 総合個人年金一時金取り崩しタイプ
表2:60歳~10年間を埋める 総合個人年金10年確定年金を選択する
表3:60歳~20年間を埋める 総合個人年金20年確定年金を選択する
表4:総合個人年金10年繰り延べ→総合個人年金20年確定年金を選択する
表5:長生きリスク対応 総合個人年金の15年保証付き終身年金を選択する
表6:総合個人年金10年確定年金と厚生年金片方繰り下げの組み合わせとする

(参考)高齢者夫婦二人の65歳以降の月額生活費は26.8万円(年間生活費は321.6万円・社会保険料と税金込み)です。
    高齢単身者の場合、月額生活費は15.6万円(年間生活費は187.2万円)です。
    (2022年総務省家計調査より)

表をどう読みとるか?

・「基本形」を見てみましょう!
 厚生年金・基礎年金は65歳からで合計230万円の収入です。
 DC確定拠出年金は65歳から20年、年間90万円(84歳まで)
 総合個人年金はない例です。

・高齢者夫婦二人の生活と考えると・・・・・
 60歳からの5年間の収入が300万円なので、収入が十分ではありません。
 65歳以降は320万円となっているので、十分とは言えませんがなんとかなりそうです。
 しかしDCの20年年金が終わるので85歳以降が不足します。
 全体的にゆとりはありません。

以上のようなことが基本形からはわかってきます。
→収入の流れの毎年の「収入合計」と比較をしてご自分の老後の資金の目安としましょう。



それでは実際に総合個人年金を組み合わせた表1~6を見てみましょう!
 

表1 60歳から5年間を埋める―総合個人年金一時金取り崩し
総合個人年金を一時金で受給し、この5年の赤字補填をするやり方です。余裕資金部分はiDeCoやNISAに回すことも可能です。

表2:60歳から10年間を埋める―総合個人年金10年確定年金
10年確定年金で受け取ると、年間105万円程度の年金額となります。60歳からの5年もあまり無駄遣いをしなけば大丈夫でしょう。

表3:60歳~20年間を埋める 総合個人年金20年確定年金
総合個人年金を最大の額に増やせる、20年確定年金で受け取る例です。

表4:10年繰り延べし、20年確定年金とする
60歳から最大10年繰り延べで増やします。1,000万円の年金原資が70歳に約1,100万円(推定)となるので、そこから20年確定年金で受け取ると、年額約115万円の20年年金となり、資産寿命を延ばせます。

表5:長生きリスクに対応をする!15年保証付き終身年金とする
60歳男性の場合、1,000万円の年金原資で、年額48.7万円の終身年金となります。
長生きリスクに対応が可能です。(保証期間内だけの受取りでは年金原資を下回ります。)

表6:厚生年金の繰り下げ受給+10年確定年金の組み合わせとする 
厚生年金の繰り下げ受給と組みあわせる(このケースでは基礎年金だけの繰り下げ※)
65歳からの5年間も年金の受給額が少ないので、総合個人年金の10年確定と組み合わせます。
※片方繰り下げ 厚生年金は基礎年金と厚生年金のどちらかだけの繰り下げが可能です。配偶者加給が付くケースでは基礎年金だけの繰り下げにメリットが!


自分の望むファイナンシャルプランに近いものはありましたでしょうか。
参考ですが、
・日本人の男性の平均寿命は81.05歳、女性は87.09歳です。(2023年厚労省DATA)
・健康寿命は、男性72.68歳、女性75.38歳です。(2019年厚労省DATA)
・また、60歳の方の平均余命は男性23.59年(約84歳まで)、女性28.84年(約89歳)となっています。(2023年厚労省)

以上も踏まえ、
・60歳からの5~10年を充実させたいのか?
・健康寿命の期間を充実させたいのか?
・より長生きした場合のリスクに対応をしたいのか等、それぞれ自分なりの考えで自分に最適のファイナンシャルプランを作成することが重要です。
 絶対的な正解はありません。

退職時一時積立や繰り延べの様々なパターンも活用しながら自分に合った受け取り方を検討してみてはいかがでしょうか。ぜひお金の流れを「見える化」し、何が自分にとっても重要なポイントかを見つけ、より充実した100年人生のプランを作りましょう。

うまく総合個人年金も活用したいですね。

上記コラムの受取額については2024年時点での概算数値となります。
実際の総合個人年金受取額につきましては引受保険会社にご確認ください。