コラム

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FP相談室講師による特別寄稿
2024.10.29

働く人が直面する高齢期の住まいと費用について③

働く人が直面する高齢期の住まいと費用について③

毎月、FP相談室講師にコラムを執筆していただきます。今回は介護支援専門員 川上由里子さんがご担当です。

ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が介護・福利厚生保険制度の有効活用について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。


「働く人が直面する高齢期の住まいと費用について①」では高齢者向け施設・住宅全体の種類と費用の目安について
「働く人が直面する高齢期の住まいと費用について②」では介護保険施設の具体的な費用例と施設入居費用の軽減方法についてお伝えしました。
本稿では元気な高齢者の住まいについてお伝えします。

1.元気高齢者が住み替える高齢者住宅とは? 

長寿命化するわが国において、近年は元気シニアの住まいの選択肢も増え住まい方が多様化しています。
働く人が直面する高齢期の住まいと費用について①表内8、2011年に制度化された「サービス付き高齢者向け住宅」は、高齢者に配慮された住環境とサービス(必須サービスは安否確認と相談)が提供され、年々利用者数も増えています(2011年よりスタートし2024.6月末時点287,687戸、8301棟整備)。

働く人が直面する高齢期の住まいと費用について①表6「有料老人ホーム」にも、要介護者のみならず入居時自立を条件としているタイプがあり、「サービス付き高齢者向け住宅」と「介護付有料老人ホーム」が併設され介護状態になったら移り住むといった住まいもあります。
共有スペースが広く複数のアクティビティサービスも用意されている為、その分費用も高額となります。

このようにアクティブなステージで住まいを探す方が求めるものは、将来の介護と介護予防、そして現在の快適さ安心感、より自分らしい住まい方です。
前述の介護が必要なステージで求める住まいは、日常の介護やリハビリなどが優先される為、特に介護や医療サービス、費用については慎重に確認しましょう。
住み替えのタイミングによってはさらなる住み替えの可能性を視野におれておくことが必要です。

また、UR都市機構が全国で運営する一般賃貸住宅では、高齢者や多世代に配慮された「地域医療福祉拠点化団地」の整備が進められています。
介護施設ではありませんが見守りサービスもニーズにあわせ選択することができ、生活支援アドバイザーが配置されている団地もあります。
ゆるやかな人とのつながり、明るい介護予防といった新しい住まい方が展開されています。
その他公営団地や民間賃貸住宅でも、超高齢社会に対応できるさまざまな住まい作りが始まっています。
介護施設は空きがなく入れない、有料老人ホームは高額で費用の準備ができない、民間賃貸住宅は高齢を理由に入居を断られた、といった高齢者の住まいの選択肢のひとつとして注目されています。住まい探しに困った方はお問合せされるとよいでしょう。

このようにホームを選択するタイミングや心身の状態、暮らしに求めるもの、資産によって選ぶホームが異なります。
住まいを考える ステージにより異なるニーズ.jpg

2.高齢期の住まい探し 選択の際のポイント

ここまで、主な高齢者住宅の費用を中心にお伝えしました。

ご相談に訪れる方のお話に、私はじっくり耳を傾けながらニーズの確認を行います。
心配や不安の原因を探っていくと、今単に感じている要望だけではなく、住まいに求める暮らし方がみえてきます。
誰と、いつから、どこで、どのように暮らしたいのか?今の住まいや暮らしでのお困りごと、介護者の状況や気持ちは、今、これからのお金のこと、親、働く自分それぞれの状況や想い。
高齢期の住まい探しには思わぬ情報、多くの時間、費用がかかりますが、情報や費用のみに振り回されずニーズの明確化をしながら探すことが大切なポイントです。

現在の健康状態、地域の社会資源、家族の介護力、現在の住まい、費用、を一つひとつ確認し総合的に検討することで、今必要とする住まいがみえてきます。
探している住まいに何を求めるのか、現在の住まいに不足しているものは何か、どこに費用を充てたいのかを確認しましょう。

様々な事情で自宅での生活は難しいとなった時に、支える世代の気持ちと支えられる親世代の気持ちが一致しないことが多いのも現状です。
しかし、住まいは暮らしの器、生活の基盤です。問題だけに目をむけず住まい、住まい方に求める安心や楽しさも大切にしたい視点です。
そのためにも将来介護が必要となった時、住まいをどう整えたいのか家族で話し合い、親の希望を尊重しながら自分たちの考えを持つことが望まれます。

近年は行政や民間など高齢者住宅の情報を提供する専門相談機関も増えています。
住宅やお金の専門家が語る介護とお金のセミナーもよく見かけるようになりました。
住まいを探す際は、まずは家族の心身の状態をよく把握しているケアマネジャーや地域包括支援センターへ、そして市区町村の窓口へ相談しましょう。
その上で住まいやお金の専門家のも相談も上手に活用しましょう。
高齢期の住まい・住まい方をライフプランのひとつとして早い段階から検討される方が増えることを願います。
高齢者の住まい探し 選択の際のポイント.jpg

【全国の有料老人ホーム(特定施設)や特別養護老人ホームの情報
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