5つの制度の活用事例や新制度の特集コラムを掲載しております。
毎月(株)ポラーノ・コンサルティング代表のファイナンシャルプランナーであり、FP相談室講師でもある深澤泉さんに保険コラムを執筆していただきます。
著者の深澤さんはFP相談室設立当初よりFP相談を担当されており、 独立後も外部コンサルタントとして各TECの相談を担当。会社の各種制度を熟知して、ソニー社員ならではの悩みを解決していらっしゃいます。
ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が公的保障について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。
前回のコラムでは私たちの在職中のリスクをカバーする公的医療保険と、障害給付・遺族給付を中心に公的年金の制度について概観しました。
今回は、公的保障を補完する必要性に関する、いくつかの視点を見ていきます。公的保障で不足する部分や、公的保障にない部分を補完するためには、貯蓄や世帯の収入のほか、「保険」という手段を活用することも選択肢です。
特にリスクが現実化する可能性はごくわずかですが、実現したときの経済的なダメージが大きいリスクについては、保険料という対価を支払ってリスクを移転する「保険」を活用することは合理的といえます。
公的年金では、遺族基礎年金と遺族厚生年金という遺族給付があります。
家族構成などの条件によっては、公的年金の遺族給付には留意点がありますので、そちらも前回のコラムでご確認ください。
(前回コラム 公的保障を知る!(2)~公的年金(障害給付・遺族給付)について~)
いずれの年金も、受給額や受給期間を考えると、一般的には日常生活費はまかなえても、特に子のいる世帯での教育費までは準備できないケースも考えられます。
それぞれの条件を勘案し、現在保有する金融資産の額や、その後の遺族の収入を考慮しても、公的な保障だけでは不足するということであれば、自助努力による保障を確保しておきましょう。
以下の事例の家族で、夫が死亡した場合に備える死亡保険金額の設定の目安を考えてみます。公的年金の年金額は、事例をもとにした試算例であることをご了承ください。
<事例> ・夫(会社員・40歳):年収600万円 ・妻(会社員・40歳):年収400万円 (今後妻は60歳までこの年収で働くと仮定) ・長男:10歳、長女:8歳 |
夫死亡後、遺族に必要となる支出を累計します。
項目 | 計算式 | 金額 |
日常生活費 | ・8歳の長女が大学を卒業する22歳まで 月額30万円と仮定×12ヵ月×14年=5,040万円 ・その後妻が90歳まで生存した場合(54歳~90歳) 月額20万円と仮定×12ヵ月×36年=8,640万円 |
13,680万円 |
教育費 | 子供の教育費1人1,500万円×2人 | 3,000万円 |
合計 | 16,680万円 |
次に夫死亡後は夫の収入は無くなりますが、公的年金の遺族給付があります。妻の就業による収入を含め、今後の収入を累計します。
項目 | 計算式 | 金額 |
妻の就労 | 400万円×0.75(可処分所得)×20年 | 6,000万円 |
公的(社会)保障 | 妻が48歳(長男が18歳)まで (遺族基礎年金・遺族厚生年金) |
1,368万円 |
妻が48歳~50歳(長女が18歳)まで (遺族基礎年金・遺族厚生年金) |
298万円 | |
妻が50 歳~65歳まで (中高齢寡婦加算・遺族厚生年金) |
1,605万円 | |
妻が65歳から90歳まで (老齢基礎年金・老齢厚生年金) |
3,750万円 | |
合計 | 13,021万円 |
これらをもとに試算すると、<支出>-<収入>は16,680万円-13,021万円=3,659万円となり、公的年金でカバーできない生活費を、生命保険で準備する夫の死亡保険金額の目安は、3,500万円程度となります。
金融資産を保有していれば、さらに死亡保険金額を減らしてもよいでしょう。
前回のコラムで見た通り、医療費については、高額療養費制度により、ソニー健保組合に加入している皆さんは1人1ヵ月1医療機関で2万円の自己負担で済みます。
(前回コラム 公的保障を知る!(1)~健康保険について~)
ただし、次のような留意点があります。
・健康保険が適用されない治療・手術・投薬を選択した場合は、健康保険が適用される診療を含めて、全額が自己負担となります。
・先進医療や差額ベッドを利用した場合は全額自己負担となり、先進医療の中には300万円を超える費用がかかるものもあります。
長期間にわたって医療費の支出が続く場合などに備えて、自助努力による保障を確保しておきましょう。
また、先進医療や差額ベッド利用は、発生頻度としては高くないものの、経済的に大きなインパクトとなりますので保険で備えるという選択肢が有効です。自助努力による保障を確保しておくとよいでしょう。
次の自助努力による保障の必要性とは?(2)では、長期休業補償・親介護の視点について説明をいたします。