5つの制度の活用事例や新制度の特集コラムを掲載しております。
毎月(株)ポラーノ・コンサルティング代表のファイナンシャルプランナーであり、FP相談室講師でもある深澤泉さんに保険コラムを執筆していただきます。
著者の深澤さんはFP相談室設立当初よりFP相談を担当されており、 独立後も外部コンサルタントとして各TECの相談を担当。会社の各種制度を熟知して、ソニー社員ならではの悩みを解決していらっしゃいます。
ぜひ、皆さまの福利厚生保険制度活用の参考にしてください。
※このコラムはFP相談室講師が公的保障について解説をしたものであり、特定の制度や商品の募集ではありません。
死亡保障・医療保障の視点について解説した自助努力による保障の必要性とは?(1)につづき、この記事では長期休業補償・親介護の視点について解説をしていきます。
病気やケガによる入院・自宅療養が長引いた場合には、収入が減少したり喪失したりするリスクを考えなければなりません。
健康保険では傷病手当金の制度があり、皆さんが加入しているソニー健保組合では、月収の約85%が最長3年間支払われます。
(前回コラム 公的保障を知る!(1)~健康保険について~)
ただし、次のような留意点があります。
・休職期間が満了したら退職となり、その後収入が途絶えてしまいます。
・退職後、病気やケガで働くことができない状態であれば、その間は雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)は支給されません。
・収入が減少・喪失しても、住宅ローンがある場合、一般的な団体信用生命保険では、返済が免除されない場合があります。
・一定の障害状態になれば公的年金の障害給付がありますが、現状の住居費・生活費・教育費をすべてまかなえる水準ではありません。
病気やケガの場合には、医療保障以外にも、長期休業補償というリスクマネジメントを考えておく必要があります。
長期休業はそれほど発生頻度としては多くありませんが、発生すると経済的なインパクトが大きく、貯蓄を切り崩すこととなるため生活にも大きな影響があります。
死亡保険と同様、保険で備えておくことが必須のリスクといえます。
月収35万円(標準報酬月額36万円)のソニーグループの社員が病気で6年間就業不能となった場合、最長3年間は健保組合から傷病手当金が支給されます。
その後復職できなければ退職となり、3年間収入が途絶えることになります。日常生活費月額を30万円とした場合、6年間の収支は以下のようになります。
<支出>
項目 | 計算式 | 金額 |
生活費 | 30万円/月×72か月 | 2,160万円 |
<収入>
項目 | 計算式 | 金額 |
傷病手当金 | 約30万円/月×36か月 | 1,080万円 |
これらをもとに試算すると、<支出>-<収入>は2,160万円-1,080万円=1,080万円となります。
これを回避するために、ソニーグループの社員には長期休業補償プランが準備されています。
保険で全てをカバーしようと考えるのではなく、家族の収入や貯蓄状況もあわせて加入口数を設定することが大切です。
最低でも2口(5万円×2口=10万円)、できれば5口(5万円×5口=25万円)を準備しておきましょう。
自分の老後生活を迎える前に、親の介護に直面するケースがあります。
公的介護保険により、要支援・要介護度に応じた介護サービスの費用について、原則1割を自己負担すればよいことになっています。
ただし、次のような留意点があります。
・公的介護保険からのサービスに上乗せしたり、公的介護保険が適用されないサービスを選択したりする場合は、その部分について全額自己負担となります。
・介護の期間が長期化したり、施設に入居したりすると、介護費用の総額が増大します。
・介護に直面したときにどのように対応すればよいか、仕事と介護を両立するためにどのような介護サービスを受ければよいか、などに関する情報は入手しにくいのではないでしょうか。
親の介護費用は公的介護保険に加えて、親の資金で行うことが望まれますが、仕事と介護の両立を考えると介護する側にも一定の費用負担は必須といえます。
また、親の介護を行うために離職すると、その後の生活設計に支障をきたします。双方の両立が図れるような情報面での準備も併せて行う必要があります。
家族のリスクマネジメント全般を考えた場合、公的保障(補償)がない分野も網羅しておくことは言うまでもありません。
火災地震による自宅や家財の損害、自動車事故での賠償責任・車両の損害、日常生活での第三者への損害賠償責任などについても、一度総点検してみましょう。
リスクの現実化によってみずからの資産を取り崩すことを、可能な限り防ぎたいものです。
自助努力による保障・補償をどの程度確保しておけばよいかについては、「あなたに必要な保障は?」のページをご確認ください。年代と家族構成別で一般的なモデルプランを掲載しています。
自分のリスクがどの程度カバーできているかを「見える化」しておけば安心です。